この記事を書いている人

税理士 堀 龍市
投資専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
FXや仮想通貨、株式やバイナリーオプション等、投資の税金対策や法人化に精通。
有名トレーダーをはじめ全国の投資家らの税務顧問を多数担当し、専門誌での連載などメディア実績多数。
業務にはオンラインも活用し、北は北海道から南は沖縄の離島までクライアント実績を持つ。
最近、弊社へのご相談で
「令和4年4月1日から、仮想通貨の取り引きにトラベルルールが導入されると取引所から連絡が来たのですが、何か税金への影響はありますか?」
という問い合わせが何件か寄せられました。
確かに弊社へも日本暗号資産取引業協会(JVCEA)からの通知が届いております。
トラベルルールが何かは後ほど解説するとして、結論から申しますと、暗号資産にかかる税金を計算する上では特に影響はありません。
ただ、税金の計算には影響ありませんが、特に国内・海外問わず複数の口座を利用し、頻繁に送金を行うような方は、トレードそのものに影響が出る可能性があるかも知れませんし、税務調査に発展する数が増えるのではないか?という懸念の声も上がっています。
具体的にどういうことかも順に解説致しますが、例えば2021年は仮想通貨バブルと言われるほどに暗号資産も高騰し、保有していた暗号資産を売却したことで大きく利益を上げたという方も少なくないでしょうから、税務調査も気にしておく必要があると言えるでしょう。
今回は新たに導入されたトラベルルールと、導入により懸念される税務調査について解説いたします。
仮想通貨におけるトラベルルールとは?
既存のトラベルルールというのは、金融機関同士の送金時の取り決めを指すもので、この共通のルールがある事によって、各国への送金等がスムーズに行われます。
今回導入される仮想通貨(暗号資産)に関するトラベルルールは、
「利用者の依頼を受けて暗号資産の送付を行う暗号資産交換業者は、送付依頼人と受取人に関する一定の事項を、送付先となる受取人側の暗号資産交換業者に通知しなければならない」
引用元:日本暗号資産取引業協会「トラベルルール導入について」一部抜粋
というルールです。
簡単に言うと、どこに送るのかをしっかりと報告しないと送金できないよ、不正送金を追跡できるように情報提供してね、ということです。
暗号資産はその仕組み上、金融機関のように共通の送金システムがありません。
そのため、マネーロンダリングなど国際金融犯罪に悪用されやすいという傾向があり、その増加を見越して規制強化に乗り出したのがこのトラベルルールの適用です。
トラベルルールでは具体的に何が必要?
今回導入されるトラベルルールは、送金する際に受取人の情報を登録しなければならず、送付側の業者は受取側にその情報を通知する義務があるというものです。
受け取る側が業者であっても、ハードウェアウォレットであっても、送付する場合は登録が必要になりますので、送り先がいつも同じ口座やウォレットであれば一度登録すればそこまで手間にはなりませんが、新たな送り先が出て来れば、確認して登録が必要になりますので、今までよりも手間がかかることは確実と言えるでしょう。
具体的な内容としましては、
- 送付依頼人情報(氏名、住所又は顧客識別番号)
- 受取人情報 (氏名、送付先暗号資産アドレス、住所に関する情報)
- 受取側暗号資産交換業者の有無・ある場合はその名称
- 取引目的等に関する情報
引用元:日本暗号資産取引業協会「トラベルルール導入について」一部抜粋
といった情報を送付側の業者は取得しなければなりません。
その上で、以下の内容を受け取り側に通知しなければなりません。
- 送付依頼人情報 (氏名、住所又は顧客識別番号、送付(出力)に用いた暗号資産アドレス)
- 受取人情報 (氏名、送付先暗号資産アドレス)
引用元:日本暗号資産取引業協会「トラベルルール導入について」一部抜粋
このように誰から誰に送ったかが簡単にわかるようになっています。
仮想通貨におけるトラベルルールの適用範囲は?
この仮想通貨(暗号資産)に関するトラベルルールは、日本だけが行っているものではありません。
FATF(金融活動作業部会)が、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策についての国際基準(FATF 基準)において、各国の規制当局に対して導入を求めているもので、日本だけでなく世界各国でも暗号資産が資金洗浄やテロの資金に利用されることを懸念しているため、多くの国が導入に向けて動いていると言われています。
国によっては、本人確認(KYC)の済んでいないウォレットに送金できる金額に制限を設けるであったり、ユーザーが秘密鍵を管理するウォレット(暗号資産交換業を行う業者ではないという判断ができるウォレット)への送付であれば情報は取得しない、など多少の対応の違いはあるものの、基本的には情報の取得が義務付けられるような規制になるよう調整されると見られています。
日本だけのルールであれば、海外の取引所だったらバレないよね?と考える方もおられるかもしれませんが、このトラベルルールは上記のように日本だけが行っているルールではありませんので、どのような取り引きをしているか簡単に分かるものだと思っていたほうが良いでしょう。
海外の取引所には送れるの?
今のところ、主な国内取引所の対応を見ている限りでは、海外取引所だという理由だけで送金が直ちにできなくなる、ということは無いと各取引所のFAQなどで回答しています。
しかし以前から日本では、金融庁に無登録で暗号資産交換業を行う、バイナンスなどの海外取引所などに度々警告書の発出を行っていて、無登録の業者の利用を良しとしていません。
そのため、今は海外の業者だからという理由で送金できなくなることは無かったとしても、今後はこれまで以上に海外の未登録業者に対しての締め付けが、厳しくなる可能性がないとは言えないでしょう。
税務調査ではどうなる?
冒頭で少し触れましたが、送金の情報がしっかりと登録されることになりますので、税務調査では調査を行う対象を絞りやすくなると考えられます。
税務調査を行う調査官が全員、暗号資産に詳しいとは限りません。
このような詳細の情報が取引所の方でしっかり管理されていれば、ブロックチェーンを確認するという事をしなくても取引が把握でき、反面調査もしやすくなると考えられますので、今まで以上に税務調査の効率がアップして、調査に入られる件数が増えるかも知れません。
まとめ
今回お話させていただいた仮想通貨(暗号資産)のトラベルルールは、税金の計算上は直接関係はありませんが、使用する取引所選びなどトレードへの影響や、後の税務調査に関係してくる可能性がありますですので、順を追って解説致しました。
今のところはトレード等にそこまで影響が出ているような話は聞いていませんけども、かつてFXもそうであったように、仮想通貨(暗号資産)の規制や法改正は、これからも色々と行われる可能性が高いと思われますので、またメルマガや当ブログでもその都度、最新情報をお伝え致しますね。
▶具体的な節税実績や、無料での法人化、無料節税シミュレーションについて見る >>> TOPページへ
※上記の内容は記事発行時のものです。税法は毎年変わります。現在のリアルタイムな税金対策の内容や、何かご不明な点がございましたら、お電話や以下のメールフォームからお気軽にお問い合わせ下さい。また、今よりどれだけ節税できるかの目安となる「シミュレーションのサンプル資料」を無料で差し上げております(もちろん相談されても、こちらから契約を迫ったり、セールスや勧誘等を行う事は一切ございませんのでどうぞご安心下さい)。