STEPN

弊社は2008年の創業以来、FXをメインとした投資の税金の専門家として、その確定申告代行や、トレードを行うための会社設立(法人化)サポート、またその法人決算等を行っておりますが、年の経過と共に、投資の種類やそのご相談内容にも移り変わりがあります。

例えば2010年代後半からは、ビットコインの流行で、仮想通貨(暗号資産)の問い合わせや確定申告代行のご依頼が一気に増えました。

そして最近、徐々に増えてきているのがNFTに関する問い合わせです。

以前の記事でも書かせていただきましたように、2021年に大きく注目されたのはNFTアートですが、最近では体を動かす事で暗号資産が得られるという「Move to Earn(M2E)を」利用したアプリも増えてきて、その中でも有名なのが「STEPN(ステップン)」です。

歩くだけで暗号資産が稼げるというSTEPNですが、一般的なゲームと違って実際に稼いだ暗号資産は日本円に換金できるとあって、一時期、爆発的に人気が出ました。

ただ中国でのプレー禁止が運営より発表された2022年5月辺りから、関連するコインが一気に暴落し、歩いてもあまり稼げなくなってしまったため離れる人も出てきてるようですが、すでに稼いだ分はもちろん申告が必要です。

これは「STEPN」に限りませんが、仮想通貨(暗号資産)の確定申告は非常に手間が掛かるケースも多々ありますので、直前になって困らないよう、今回は「STEPN」を例にNFTゲームの税金の考え方について解説したいと思います。

 

STEPN(ステップン)の大まかな仕組みとは?

冒頭でも少し解説したSTEPNですが、Move to Earn(M2E)と言われる仕組みを利用した、歩く・走るなど、移動する事で暗号資産が稼げるというNFTゲームです。

具体的にはスニーカーのNFTを購入し(現物のスニーカーを購入するわけではありません)、適正速度で歩いたり走ったりすることで、GST(Green Satoshi Token)というトークンが付与され、そのトークンは(日本では一旦別の暗号資産への交換が必要にはなりますが)実際に現金化することができるというものです。

また、そのNFTスニーカーを売却することも可能です。

靴の種類には、歩く方向けの「WALKER」、少し速めの「JOGGER」、走る方向けの「RUNNER」、適正速度の範囲が最も広い「TRAINER」があり、その靴の種類によって適正速度や付与されるGSTの量が変わりますので、スタイルに合わせて1足に絞るのか、2足買って使い分けるのか、それによって稼ぐスピードも変わってきます。

このNFTのスニーカーですが、リアルな靴と同じで歩けば修理が必要になり、修理をしないと付与される暗号資産の数量が少なくなるような仕様になっていますので、定期的に修理することになります。

また、スニーカーのステータスを上昇させる(レベルアップ)であったり、2足のスニーカーを掛け合わせて新たなスニーカーを生み出す(ミントする)ことで稼げるGSTの量が増えます。

ここは育成系シミュレーションゲームのレベルアップのようなイメージですね。

修理やレベルアップ等には、GSTやGMT(Green Metaverse Token)といったトークンが必要になります。

基本的に稼いだら確定申告が必要になるというのは仮想通貨(暗号資産)に限らずあることなのですが、実際に申告するにあたって収支の計算はどのような考え方になるのでしょうか。

税法上、このようなゲームの計算の仕方について明確に書かれていないため、暗号資産の基本的な計算の考え方や従来からある税法に則って、考え方を解説していきます。

尚、全部ひっくるめて考えると、非常に複雑になってしまいますので、順番に分けてご説明させていただきますね。

STEPN(ステップン)の税金を確定申告する際、所得の計算と考え方について

STEPNでの遊び方は簡単ですが、収支の計算はかなり手間がかかります。

一般的な暗号資産の計算のルールと基本的には同じなのですが、現物取引のように買ったコインをただ売ったという単純な流れではありませんので、一つずつ分けて説明させていただきます。

実際にわかりやすい数字を当てはめて計算しておりますので、ご参考にしてくださいね。

STEPNでNFTスニーカーを購入した時

まず最初にアプリ内で販売されているNFTスニーカーを購入します。

現金(法定通貨)で購入できませんので、基本的にはsolanaブロックチェーンのトークンである「SOL」が必要になります
(※BSC、バイナンススマートチェーンでの取り扱いもスタートしていますが、今回はSOLで解説いたします)。

手持ちの暗号資産をSOLに交換した時、SOLでスニーカーを購入した時、それぞれが利益確定のタイミングになりますので、取得時より使用した時の方が値上がりしていればその差益に対して税金がかかります。

実際に仮の数字で解説してみましょう。

例えば1SOL=10,000円の時に取得したSOLを使って、10SOLのNFTスニーカーを購入したとします。

スニーカー購入時のSOLが1SOL=12,000円に値上がりしていた場合、このような計算になります。

(12,000円 × 10SOL) – (10,000円 × 10SOL) = 20,000円 

これが利益です。

ここまではいわゆる物品やサービスを仮想通貨(暗号資産)で購入した際の計算の仕方と同じです。

運動することで得たGSTは?

STEPNは歩いたり走ったりすることで暗号資産のGSTが付与されます。

この場合の考え方としては、マイニングで報酬を受け取った時と同じイメージで、付与された時点の時価で所得として考える事になります。

例えば、10GST付与され、その時の時価1GST=100円だった場合、1,000円を所得として考えるという事になり、現金化しなくても所得として考えることになります。

毎日歩いていたら毎日所得が発生していることになりますので、1年間同じペースで付与されれば、年間365,000円の所得ということですね。
(2022年7月末現在はかなり暴落していますので、これをご覧になられているタイミングによっては、リアルな数字とかなり誤差がある可能性があります)

リペア(修理)した時は?

最初にも書かせていただきましたが、リアルな靴と同様に歩くと傷みますので修理が必要になります。

このリペアをする際にGSTが必要になります。

この修理に消費したGSTは、税法上のいわゆる資産価値の向上にはあたらないと考えますので、この場合は雑所得の費用(経費)として時価で計上することになります。

わかりやすい例で言うと、車のタイヤのパンク修理は費用だけど、タイヤのホイールをグレードアップさせたら、車の価値が上がるのでそれは資産ですよという考え方です。

ですので、このリペアは車のパンク修理と一緒の考え方になるということです。

計算としては、1GST=100円の時に1GST使ったら100円が費用と考えられます。

※この度、所得税の改正通達があり、FXや暗号資産における経費の範囲が縮小されました。新しい情報はリンク先の記事をご参照下さい。
>>>『【悲報】FXや仮想通貨(暗号資産)の経費が認められなくなった?』

STEPNのNFTスニーカーをレベルアップさせた時は?

STEPNでは、NFTスニーカーをGSTやGMTを使うことでレベルを上げることができ、それによって稼ぐことのできる暗号資産の量が増えるため、靴の価値が上がることになります。

先程、車の例でタイヤのホイールをグレードアップさせたら車の価値が上がるからそれは資産として考えると書かせていただきましたが、このスニーカーのレベルアップは同じ考え方になります。

レベルアップすることでNFTスニーカーの価値が上がりますので、そのために使ったGSTやGMTはそのスニーカーの原価に含める形で考える事になります。

例えば、1GST=100円、1GMT=150円の時にレベル10までアップさせようと思うと80GSTと40GMT必要になります。

80GST × 100円 = 8,000円、40GMT × 150円= 6,000円の合わせて14,000円分だけ取得単価が高くなるという考え方になります。

スニーカーを売却した場合は?

基本的に、最初に取得したときより売却した時に値上がっていたらその差益に対して税金がかかる、というのは一般的な暗号資産を現金化や交換したときの計算の考え方と同じです。

少し違うのが、先程のレベルアップの費用が計算上取得単価に上乗せされて計算することになりますので、以下のような計算の仕方になります。

1SOL=10,000円の時に10SOLのNFTスニーカーを購入、その後レベルアップに80GST(1GST=100円)と40GMT(1GMT=150円)使用したという場合は

(10,000円 × 10SOL) + (80GST × 100円) + (40GST × 150円) = 114,000円

これがこのNFTスニーカーの取得単価という考え方になります。

もし、このNFTスニーカーを1SOL=12,000円の時に10SOLで売却した場合

(10SOL × 120,000円) – 114,000円=6,000円

これが利益になります。

STEPNのNFTスニーカーをミントする(掛け合わせる)場合は?

STEPNでは、持っている2つのNFTスニーカーを掛け合わせて新しいスニーカーを生み出すことが可能です。

この場合のNFTスニーカーの取得単価は掛け合わせたスニーカーの取得単価を合計すると考えます。

1足目:1SOL=10,000円の時に10SOLのNFTスニーカーを購入(100,000円)

2足目:1SOL=12,000円の時に8SOLのNFTスニーカーを購入(96,000円)

この2足を掛け合わせて新しいスニーカーを生み出した場合の取得単価は100,000円+96,000円=196,000円となります。

実際はここにミントのためのGSTやGMT、それぞれのNFTスニーカーをレベル5以上にするためにかかった費用などの計算も含まれますので、もう少し複雑な計算になります。

STEPNの所得を確定申告する際、その税金は何所得として申告するの?

それぞれの計算の理屈はご説明させていただいた通りですが、ではこの所得は一般的な暗号資産と同じ雑所得で申告するのでしょうか。

以前に書かせていただいた記事でも説明しましたが、NFTを個人の方が譲渡した場合、譲渡所得に該当するという国税庁の発表がありました。

なのでこのNFTスニーカーの場合も、譲渡所得に該当する可能性がありますが、弊社の見解としては、譲渡所得ではなく雑所得で申告する形が無難だと考えています。

と言いますのも、譲渡所得の場合、特別控除が50万円ありますので、譲渡所得の合計額が50万円を越えなければ申告は不要になるのですが、暗号資産の計算上、その譲渡所得の額だけを分けて算出することは困難なのです。

所得の区分が混ざるというと?

個人の所得には10個の区分があるというお話は、過去に何度もさせていただいていますが、このケースで関連してくるのは「譲渡所得」と「雑所得」です。

所得の計算をする上で、スニーカーそのものの価格と、リペアやミントするために使ったGSTやGMTが関係してきますが、原則で言うとそれぞれ計算する所得の区分が異なります。

  • NFTを譲渡した場合:譲渡価格 – 取得原価 = 譲渡所得 と考え、スニーカーの取得価格やレベルアップやミントに使ったGSTやGMTがこれに含まれます。
  • GSTを使用した場合:譲渡価格 – 取得原価 = 雑所得 と考えますが、上記の譲渡した際にもGSTは使用されています。

ということは、最初にNFTスニーカーを買ってから、リペアして、レベルアップさせて、ミントして売った場合、譲渡所得と雑所得が複雑に混ざった状態になってしまいます。

もしデータ上、100回GSTを使用していたとしたら、その100回の内の、◯月◯日◯時◯分にいくつのGSTを、リペアに使ったのか、ミントやレベルアップに使ったのか、が分からないと、そのGSTは譲渡所得で計算すべき金額なのか、雑所得で計算すべき金額なのか、の判断が出来ません。

これを一つ一つ紐解いていくのは至難の業です。

この記事を書かせていただいている2022年7月時点では、集計に必要な取引のデータを入手出来るような仕組みにはまだなっていないため、分けて計算することは不可能に近い状態です。

もし仮に取引データを取得出来たとしても、そのデータを見た時に、使用したGSTがリペアに使ったのか、レベルアップに使ったのかまではわかりません。

あくまでもGSTが入ってきたのか、出ていったのか、という所までしか確認出来ませんので、税金的には不利になりますが、ひっくるめて雑所得として申告するのが無難という考え方になるというわけです。

STEPNを譲渡所得として申告するのは、収支計算のプロであっても難しい?

理屈上は、データがあれば計算できそうではあるのですが、その肝心なデータが計算出来るような状態で揃わないだけでなく、STEPNユーザーがNFTのデータを理解していないと集計は出来ません。

ほとんどの方は、基本的にゲームで遊んでるだけで、確定申告をするためにゲームしているわけではありませんので、NFTのデータを正しく理解している人が果たしてどれだけいるのか、というのが現状です。

実際に弊社が取引きしている仮想通貨(暗号資産)の収支計算を行うシステム会社の担当者も、譲渡所得と雑所得に分けて計算するのは難しい、不可能に近いと言います。

計算そのものの複雑さよりも、ゲーム内のコインの動きを紐解いていく手間がとてつもなくかかるというイメージです。

もし仮に集計を引き受けるとなった場合でも、収支計算を行う会社だけでなく、依頼した側も確認する内容が多く、とてつもない手間がかかるため、せっかく稼いでいても申告するには、費用対効果が全く見合わない高額な費用で計算することになってしまいますし、確定申告までに集計が終わらなければ期限内に申告する事ができません。

こうなると、実務的には年内に持っているスニーカーもコイン(GSTやGMT)も全て売却してしまい、全て雑所得として計算するのであれば、もう少し計算は簡単になるかもしれないと考えます。

まとめ

今回はSTEPNを例に、NFTゲームで得た暗号資産の申告についてまとめさせていただきました。

それぞれの計算の理屈は分かっても、現状では実際に集計を行うことが非常に難しいジャンルということがおわかりいただけたかと思います。

そのため弊社では2022年7月現在、NFTゲームの税務上のシステムや環境が、他のご依頼者の方の申告に影響がでない程度に改善されるまでは、それらの申告代行のご依頼は見送らせて頂いておりますので、予めご了承ください。

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