この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
投資専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
FXや仮想通貨、株式やバイナリーオプション等、投資の税金対策や法人化に精通。
有名トレーダーをはじめ全国の投資家らの税務顧問を多数担当し、専門誌での連載などメディア実績多数。
業務にはオンラインも活用し、北は北海道から南は沖縄の離島までクライアント実績を持つ。
ここ数年、ビットコインの他にも、イーサリアムやリップルなど仮想通貨(暗号通貨)の取引が増えており、弊社のクライアント様の中にも投資をされている方が非常に多くおられ、その税務実績は日本でトップクラスだと自負しておりますが、それらで利益が出た場合、やはり気になるのは税金のことでしょう。
ちなみに、個人で仮想通貨取引をした場合の所得は「雑所得」となり、最大で55%の税金がかかりますので、やはり少しでも節税したいと考えるのは、皆さん同じかと思います。
ただ、節税対策の最も基本的な方法としてあげられるのが、必要経費をしっかりと計上するということで、「そんなことは分かってるよ」とおっしゃる方は多いのですが、実際に資料を拝見してみると、プロの目から見てきちんと計上出来ている方は非常に少ないのが現状です。
そんな勿体ないことにならないよう、また、強引な計上をして税務署から指摘をされてペナルティーの税金を追徴されないよう、今回は仮想通貨の必要経費について、誰でも出来る基本的なことから順に解説していきましょう。1
※この度、所得税の改正通達があり、FXや暗号資産における経費の範囲が縮小されました。新しい情報はリンク先の記事をご参照下さい。
>>>『【悲報】FXや仮想通貨(暗号資産)の経費が認められなくなった?』
税務署に聞いたら仮想通貨に経費などないと言われたんですが……
確定申告のやり方などについて、分からないことがあった場合、最寄りの税務署に聞けば教えてもらうことができますが、残念ながら節税の仕方までは教えてくれません(笑)。
手数料のように、明らかに経費と考えられるものについては、経費に計上できると言ってくれるかもしれませんが、税務的な判断が必要なものについては、無難に経費ではないと言われてしまうケースが多くあります。
(但し、実際には手数料についても計上できるものと出来ないものがありますので、以下はFXの記事になりますが、そちらもあわせてご参照下さい。)
関連記事>>>『FX税金の確定申告でスプレッドや手数料は経費になる?税理士が解説』
もちろん、経費として計上できるものは色々とありますので、税務署のいうことを鵜呑みにする必要はなく、これはFXの時の事例なのですが、毎月の無料相談会で伺っていても、そういった情報があまりにも多いので、本当かどうか確かめようと、税理士ということは隠して、私もFXの必要経費のことを聞くために最寄りの税務署まで相談に行ったことがありますが(笑)、その際も「FXに必要経費なんてありませんよ!」と言われました。
なので、
「でも税金の本を読んでみたら、FXの勉強に使ったセミナー代などが経費になると書いてあったんですが……」
と聞くと、
「そのセミナーに出たことによって、今の利益が出たことが明らかに証明できるなら経費かもしれませんけど、セミナーに出たからかどうかわかりませんよね?
セミナーに出ていなくても利益が出た可能性もあるんじゃないですか?」
と一蹴されました。
そもそも仮想通貨の必要経費とは?
では、本当に仮想通貨取引に必要経費は存在しないのでしょうか。
冒頭でもお話ししましたが、ビットコイン取引による所得は、雑所得に該当するとされています。
関連リンク>>>『ビットコインや仮想通貨の利益は雑所得と国税庁が発表?』
国税庁ではビットコインとしていますが、他のアルトコインも同様と考えられます。
雑所得の必要経費については、所得税法第37条第1項で定められていて、
総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用 (所得税法第37条第1項より一部抜粋)
と記されています。
つまり税法上、「仮想通貨取引を行う上で、直接関連のある費用」については経費になると考えられるというわけです。
具体的に仮想通貨の経費として計上できそうなものとは?
では、この「仮想通貨取引を行う上で、直接関連のある費用」ということを踏まえて、仮想通貨取引の必要経費となるものを具体的に考えてみましょう。
- 仮想通貨の取得費
- 取引手数料
- 研修費(仮想通貨セミナーの受講費など)
- 研修を受けるためにかかった交通費や宿泊費
- 新聞図書費(仮想通貨取引関連の書籍や雑誌など。また仮想通貨取引に関するE-BOOK や配信サービス等の費用など)
- 通信費(仮想通貨取引にかかった分のインターネット接続費用など)
- 仮想通貨取引に関する器具・備品・消耗品費など
一般的には、このようなものが該当すると考えられます。
ただし、通信費や取引用のパソコンなどで仮想通貨取引専用として利用していないものについては、全額を経費として計上するのではなく、仮想通貨取引に利用した割合で按分して、経費計上する必要があることに注意しましょう。
※仮想通貨の取得費等の計算については、以下のリンクをご参照ください。
関連リンク>>>『ビットコインなど仮想通貨の確定申告をする際の具体的な計算方法とは?』
同じ物を計上したのに経費として認められる時とそうでない時がある?
ただし、予め知っておかなければならないポイントとして、必要経費を計上して確定申告をしたとしても、その経費に対して指摘を受けるのは、書類を提出した時ではなく、主には後日、税務署からの行政指導(電話や郵送物で連絡が来ます)か税務調査の時であり、その時の対応によっては調査官を納得させられるかが変わってくることがあるということです。
例えばAさんが調査対応をした時には、調査官を納得させることができた(経費として通った)が、Bさんが調査対応をした時には、調査官を納得させることができず、認められなかったという具合です。
(もちろん、調査結果に納得がいかない場合は不服を申し立てることができますが、その制度については話が脱線しますので、今回は割愛させていただきます。)
そのためにも、後日税務署から、計上した経費が本当に仮想通貨取引の必要経費なのかを聞かれた際に、しっかりと根拠を説明できるようにしておくことが重要だと言えるでしょう。
これは税務調査対策の話になってきますので、法律に則って、いかにクライアントさんのお金をお守り出来るかどうかが、実は税理士や会計士のスキルの差が大きく出る部分の一つなのですが
(これも節税対策と同じく、税理士試験に出るものではありませんので、試験に合格した後、その方がその分野の税務調査について、どれだけ研鑽と実績を積まれたかによって、雲泥の差が開いてくるのです)
ご自身で対応される場合、弊社がクライアント様にやらせて頂いているような専門的な方法でなくても、誰でも出来る簡単なやり方として、使った費用が仮想通貨取引に直接関連していることを説明できるよう、領収書などにメモを書いておいたり、一緒に証拠を残しておくことが大事になってくると言えます。
よく領収書などは、綺麗に保管しておく必要があると思われている方がおられますが、そんなことは全くなく、後から聞かれても覚えてない場合もありますので、何に使ったのか、どう利益に繋がっているのか等の具体的な内容については、むしろドンドン書き込んでいくべきです。
なので、ご自身で確定申告をされる方は、日頃からそのように証拠を残しておきましょう。
高額な必要経費には注意が必要?
よく、年末になると
「経費をなるべく多く計上したいので、とりあえず高いパソコンを買いました!」
なんておっしゃる方がおられますが、10万円以上のモノは減価償却資産となり、全額を一括で経費とすることができず、定められた耐用年数に応じて、少しずつ経費にしていくことになります。
例えば、上記のように仮想通貨取引用に新しいパソコンを購入した場合など、パソコンの耐用年数は4年となっていますので、パソコンの値段が20万円の場合には、4年間かけて少しずつ20万円を経費にしていくことになります。
(厳密に言えば減価償却には定額法と定率法があるのですが、ここでは単純に定額法で説明します。)
さらに言うと、年末に駆け込みで買った場合には、この5万円(20万円の1/4)すら経費にはなりません。
減価償却費を計算する時には、その資産を(この場合はパソコンです。)所有していた月数で5万円をさらに按分しなければならないのです。
つまり12月にパソコンを購入した場合には、5万円の1/12の約4,000円程度しか経費には計上出来ないということになります。
パソコンなどは部品で買っても認められない!
過去にこの説明をした際に、
「じゃぁパーツで購入してきてパソコンを自作します!」
とおっしゃった強者がおられました(笑)。
つまり、パソコンもCPUやグラフィックボードといった1つ1つのパーツは10万円未満のものも多いので、それらを購入してきて、すべて今年の経費で落としてしまおうと考えられたわけですが、このように、通常パソコン1台という単位で初めて事業の用途に使えるモノの取得価格を、いくら部品で購入して自作したからと言って、パーツ単位に分解して考えることはできません。
(※ただし、現在使用中のパソコンのハードディスクが壊れたので、ハードディスクを単体で購入し交換したといった場合は別です。)
この場合、通常1単位として取引されるものは、その単位ごとに取得価格を判定することになります。
CPUやグラフィックボードは単体で機能するものではなく、パソコンという単位で機能するものですから、そのパソコンのパーツの合計額が10万円未満になるかどうかで判定しなければならないのです。
これら少額の減価償却資産の取得価格については、所得税では
「所得税法施行令第126条及び所得税法基本通達49-3~49-12の2」、
法人税では
「法人税法施行令第133条、同第133条の2及び法人税法基本通達7-1-11~7-1-13」
に規定されていますので、後に税務署から指摘をされて知りませんでしたでは通りませんので注意しましょう。
まとめ
今回は仮想通貨取引の必要経費について、順を追って解説してきましたが、重要なポイントは「仮想通貨取引に直接的な関連性があること」を、事前にしっかりと説明できるようにしておくということです。
ただ、この「直接的な関連性」を考える場合、納税者側の視点で考えてしまうと、どうしてもこじつけになってしまいがちですので、判断する際は
- 税務署の調査官の視点で指摘をされたとき、相手を納得させることが出来るかどうか、客観的に考える
- 節税目的以外の経済的合理性があるかどうかを考える
この2点が大切だと言えるでしょう。
ご自身が税務署の調査官だった場合、客観的に見てそれが利益を生むことに直接関わっているものなのか、また、節税目的以外の合理性があるのか、冷静に考えて必要経費かどうかを判断するようにしてください。
もしそれでも迷われた場合は、曖昧なまま申告してしまうと、後で本来納める必要のなかったペナルティーの税金まで徴収されることにもなりかねませんので、弊社に限らず、仮想通貨の税務に詳しい税理士などの専門家に、事前に問い合わせてみられることをお勧めします。
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※上記の内容は記事発行時のものです。税法は毎年変わります。現在のリアルタイムな税金対策の内容や、何かご不明な点がございましたら、お電話や以下のメールフォームからお気軽にお問い合わせ下さい。また、今よりどれだけ節税できるかの目安となる「シミュレーションのサンプル資料」を無料で差し上げております(もちろん相談されても、こちらから契約を迫ったり、セールスや勧誘等を行う事は一切ございませんのでどうぞご安心下さい)。