FX法人化と社会保険日頃から、全国の投資家さんから寄せられるご相談として、法人化に関する質問も多くいただくのですが、

その理由としては、個人取引よりも法人の方が業者のレバレッジが高いこと(一部を除く)、損失の繰り越しが10年できること、そして個人よりも活用できる節税対策が多くあること、などが挙げられます。

特に節税対策として、法人から自分や家族などの役員に「役員報酬」を支給しているところも多く、一番ポピュラーと言っても過言ではない節税法ですが、一つ注意点として、役員報酬を支給すると社会保険への加入義務が発生します。

ただ、社会保険は報酬額によって保険料が変わるため、場合によっては社会保険料の負担が大きいと感じられるケースも少なくありません。

そのため、ネット上などで調べた結果、「年収を減らさずに社会保険料を減らす方法」のような情報を目にされて、

「それって社会保険料が減ったとして、税金面では大丈夫でしょうか?」

と不安に思われた末に、弊社へ相談してこられるケースも結構あります。

今回は「年収を減らさずに社会保険料を減らす」といった方法にデメリットがないのか、社会保険料の面からだけでなく税金面からも見て、FX法人でよくある「社長お一人の法人」を例に解説してみたいと思います。

 

FX法人の役員に支給するお給料とは?

冒頭にも少し出て来ましたが、お給料はお給料でも、一般的なサラリーマンのお給料と違い、法人の役員に支給するお給料は「役員報酬」と言って、法人税法上の扱いが異なります。

役員報酬は、原則損金不算入ですので、本来は経費(損金)にはならないのですが、条件を満たせば経費にしても良いルールとなっていて、その条件はざっくりまとめると以下のようになっています。

  • 決算後3ヶ月以内にいくら支給するか決める必要がある
  • 決定した金額を毎月支払う
  • 次の決算まで変更しない(※)
    ※期の途中で金額を変更すると、それまで支給した役員報酬も損金にならなくなる

これを「定期同額給与」と言います。

今期いくら儲かるかわからないのに先に支給額を決めないといけないの?と思われるかもしれませんが、役員報酬で利益操作できないような仕組みになっているため、事前に決めておき、原則変更することができないようになっているのです。

また、一般的にはこの定期同額給与だけにされるケースが多いのですが、「事前確定届出給与」と言って、事前に支給額や支給する日を期日までに届出に記載して提出しておけば、いわゆるボーナスを支給することも可能です。

そして先ほどお伝えした通り、役員に報酬を支給すると社会保険への加入義務が発生します

役員報酬を支給した時の社会保険について

さて、法人で役員(社長)に役員報酬を支給していると、社会保険への加入義務が発生すると述べましたが、この社会保険料は、労使折半と言って、会社とお給料を貰っている人とで半分ずつ負担する事になります。

一般的なお勤めの方は半分会社が出してくれていますので、負担感はそこまで大きくないかもしれませんが、社長お一人の法人の場合、会社が負担する分も、社長個人が負担する分も、どちらも自分のお財布から出ていくような感覚になられるのか、負担に感じられるケースも多いようです。

ちなみに役員報酬の説明で「事前確定届出給与」として、ボーナスも支給出来ると書きましたが、定期同額給与であっても事前確定届出給与であっても、どちらでも社会保険料がかかります。

社会保険には上限がある

社会保険料は月額の報酬額に応じて上がっていきますが、その保険料には上限があります。

その上限は、大阪府令和5年3月以降分の数字を例に挙げますと、

健康保険料は月額報酬が135万5000円を超えると168,329円、

厚生年金の場合は月額報酬が665,000円を超えると118,950円となっていて、月額の報酬の額がこれを超えても上記の上限より増えないことになります。

関連リンク>>>『全国健康保険協会 大阪府 保険料率表(令和5年3月分から)』

賞与の場合は、標準賞与額に保険料率(健康保険料:12.11%、厚生年金:18.3%)をかけた金額が健康保険料と厚生年金の金額になり、健康保険料で573万円、厚生年金で150万円が上限となります。

このような、上限があるという仕組みを利用して、年収を変えずに社会保険料を下げる方法があるのですが、その方法は税金面から見てデメリットは無いのでしょうか。

年収は変わらず、社会保険料だけ減らす方法とは?

先程の、社会保険料に上限があるという仕組みを利用し、具体的には【月給を減らして賞与を増やす】といった方法で社会保険料を減らしましょうといった情報があるのですが、実際はどのようなものなのでしょうか。

少々ややこしく感じられるかも知れませんが、具体的な数字を用いて例を挙げると、仮に社長の年収が2400万円だとすると、12ヶ月で割ると月給200万円になります。

この場合の社会保険料は、健康保険では上限額の168,329円、厚生年金も上限額の118,950円ですので、年間で3,447,348円となります。

これを、月給10万円、賞与2280万円の合計2400万円とした場合、月給10万円の方は、健康保険が11,867.8円、厚生年金が17,934円となりますので、年間で約357,624円。

賞与の方は2280万円ですが上限で計算しますので、健康保険が693,903円、厚生年金が274,500円となり、これの合計968,403円に、先程の月額報酬分の357,624円を足しても1,326,027円となり、12ヶ月で均等に割るよりも、年間で2,121,321円安くなる計算となります。

この数字だけを見ると賞与で支給しないと損だよねと思われるかもしれませんが、デメリットがないわけではありません。

社会保険の節税スキームにデメリットはないのか?

ここまでご説明させていただいた、報酬を定期同額給与と賞与に分けて支給することも、社会保険料は上限があって一定の金額以上は保険料が上がらないことも、それぞれの規程にしたがって進めているのであれば問題はありません。

但し、事前にメリットだけでなく、必ずデメリットも把握しておきましょう。

将来貰える金額に影響する?

上記で解説した社会保険料を下げる方法は、実は今支払う保険料は少なくなりますが、厚生年金も納める額が減りますので、比例して将来貰える年金の額も減ることになります。

なので今の負担が減ると言うことも重要ではありますが、将来貰える年金も減るという点も考慮に入れて判断する必要があるでしょう。

退職金が減って税金が増える?

役員を辞任する場合、その役員に退職金を支給することができます。

基本的には、その支給する金額に明確な規程はありませんが、実は税務調査で過大だと指摘を受けにくい算出方法があります。

それが、最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率(1~3倍程度)と言われていて、もし、同じ年収2400万円の方で、在任年数20年、功績倍率3倍だと仮定して計算すると以下のような計算になります。

月額報酬200万円とした場合:200万円 × 20年 × 3倍 =1億2000万円

月額報酬10万円とした場合:10万円 × 20年 × 3倍 =600万円

計算上、月額報酬に賞与の額は含まれませんので、退職金の額を比べた時に非常に少なくなってしまいます。

また、この計算以上の額の退職金を支給し、税務調査で退職金が過大だと判断されると、法人で経費とならなくなった金額分だけ法人に利益が増え、それに対して法人税が増えるだけでなく、延滞税もかかってくることになりますので注意が必要です。

関連記事>>>『FXや仮想通貨の無申告や脱税などペナルティの種類と対応策について』

死亡退職金が減って相続税が増える?

中にはまだ若いし退職なんて考えてないよ、という方もおられると思いますが、最終の月額報酬は死亡退職金にも関係してきます。

もしも役員の方が在任中に亡くなられた場合、会社規程にもよりますが、遺族は会社から死亡退職金を受け取ることが可能です。

その死亡退職金は、法人では損金になり、相続税は一定金額まで非課税になります。

もしこれが、月額報酬額を低く設定していたタイミングで死亡した場合、さきほどの退職金のように受け取れる死亡退職金の額が少なくなり、遺族は十分な死亡退職金を受け取ることができなくなるだけでなく、受け取れたとしても相続税が増えてしまう可能性があります。

事故など突然亡くなられるケースも無いとは言えませんので、こういった事も考慮に入れておくべき点かと思います。

弔慰金が減って相続税が増える?

他にも月額報酬の額が影響するのは弔慰金です。

役員が死亡した時に、会社から役員の家族に弔慰金を支払う事ができ、その弔慰金は法人の損金になり、相続税は非課税になるのですが、金額は無制限ではなく、以下の計算の金額を超えると相続税がかかります。

  • 業務上の死亡の場合:報酬月額 × 3年
  • 業務以外での死亡の場合:報酬月額 × 6ヶ月

このように、報酬月額がベースになってきますので、低く設定してしまうと、将来もらえたかもしれない金額よりも少なく受け取る事になります。

また、上記の計算よりも多く支給した分には、相続税がかかってくることになりますので注意が必要です。

このように、今現在の保険料が少なくなっても、将来もしもの時に本来であれば受け取れたであろう金額との差を考えると、一概に得策とは言えないでしょう。

税務調査で指摘を受ける可能性がある?

では実際に年収2400万円の方が、月額10万円、賞与2280万円とした時に、税務調査では指摘されないのでしょうか。

一般的に考えると、月給10万円の人に賞与を2280万円支給するというのは、少々考えにくいかと思います。

いわゆるサラリーマンの場合、大企業で年2回、一回あたり給与2~3ヶ月分、中小企業で年2回、一回あたり給与1ヶ月分とも言われているという事を考えると、桁外れに多い金額と言えるでしょう。

もちろん会社役員ですので、一般のサラリーマンとは業務も責任の重さも異なるため、それだけの額を貰って当然だと考えられるかもしれませんが、長年、多くの税務調査に立ち合ってきた経験から、その割合が極端な場合は、全く問題にならないとは言えないと考えます。

もし、その賞与の額が過大だと判断されれば、多すぎる部分は経費にはならなくなるため、その分法人の税金が増えることになります。

また、役員報酬は継続的に支給しているものですので、もし1年で1000万円否認されたとすると、5年で5000万円の経費が否認される事になり、支払わなければならない税金やペナルティはかなり高額になるでしょう。

賞与として支給する理由について

冒頭から出てきていました事前確定届出給与ですが、「事前確定届出給与に関する届出書」を提出する必要があります。

ここには賞与の額や支給日だけでなく、「事前確定届出給与につき定期同額給与による支給としない理由及び事前確定届出給与の支給時期を付表の支給時期とした理由」という欄がありますので、定期同額給与としない理由を書かなければなりません。

ただ単に「節税のため」や「なんとなく」という理由は通用しませんので、節税以外の合理的な理由を具体的に記載する必要があることから、特に理由が無ければ記載することができません。

もし賞与の支給を検討される場合は、それらも検討しておく必要があるでしょう。

まとめ

今回は、近頃よくご質問いただく社会保険の節税スキームについて解説致しました。

実は、役員報酬の年間額やその割り振りによっては、12ヶ月均等に割った場合と大きく変わらないケースもあります。

あくまでも上限を超えると、その部分の保険料が上がらなくなるというだけで、上限を超える金額が大きいほど社会保険料は減るという仕組みですので、少なくとも賞与の額が150万円を超えなければ通常通りの保険料と変わりません。

上手く利用できればお得にはなりますが、デメリットが無いわけではありませんので、目先の保険料だけでなく、解説させていただいたような内容も併せて検討していただくことをおすすめ致します。

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