この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
投資専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
FXや仮想通貨、株式やバイナリーオプション等、投資の税金対策や法人化に精通。
有名トレーダーをはじめ全国の投資家らの税務顧問を多数担当し、専門誌での連載などメディア実績多数。
業務にはオンラインも活用し、北は北海道から南は沖縄の離島までクライアント実績を持つ。
昨今、話題となっている、「ビットコイン」や「イーサリアム」、「リップル」などをはじめとする仮想通貨(暗号通貨)ですが、中でもこの記事を書かせて頂いている今現在、ビットコインの価格は上昇を続けていて、この機会に仮想通貨のトレードを始められた方も多いのではないでしょうか。
弊社のクライアント様の中にも、FXなどの投資とあわせて仮想通貨の取引を行われているトレーダーさんが、ここ数年で一気に増え、質問やご相談も全国各地から寄せられています。
ちなみに、これまで仮想通貨のトレードなどで得た所得に対する課税については、税法で明確に定められていないこともあり、ネット上では様々な噂や憶測が飛び交っていましたが、この度、国税庁はホームページ(タックスアンサー)にて「ビットコインを使用することで生じた利益は、雑所得として所得税の課税対象となる」との見解を示しました。
これにより、ネット上のいい加減な情報を鵜呑みにして、間違った申告等をした場合には、税務署から指摘をされ、ペナルティーを課せられる可能性が上がることも考えられますので、そんなことにならないよう、今回は、この国税庁の見解を受け、ビットコイン等の仮想通貨を使用するとはどういうことなのか、また、雑所得として課税されるとどうなるのかについて、解説していきたいと思います。
関連記事>>>『ビットコイン長者、国税がリストアップ着手 税逃れ対策 – 朝日新聞デジタル 』
ビットコイン等の仮想通貨の使用による所得の税金は「雑所得」に該当する
まずは、この度発表された国税庁の見解について確認したいと思います。
” No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。“
【国税庁ホームページ タックスアンサーNo.1524より】
このように、国税庁は今回、ビットコインを使用することにより生じた利益は、原則「雑所得」に該当するとの見解を明らかにしました。
ここにはビットコインと書かれていますが、基本的に仮想通貨全般に適用されるかと考えられます。
以前の記事でも紹介しましたが、ビットコインはモノとして扱われるとの政府の公式見解が発表されていたこともあり、ビットコインによる利益は譲渡所得に該当するのではないかという見方もあったようですが、改正資金決済法により、仮想通貨は法定通貨ではないものの、支払手段として利用できる財産的価値のあるものなどとしてその位置付けが明確にされたこともあり、原則は雑所得に該当すると判断されたものと思われます。
関連記事>>>「税制改正?ビットコイン等仮想通貨の日本での新しい税金対策法とは?」
仮想通貨と他の投資とは利益と損失の相殺はできない?
ビットコインの使用により生じた利益が雑所得となると、その税金はどうなるのでしょうか。
まず、雑所得は総合課税ですので、お給料などの他の所得と合算された上で、その所得額に応じて5%~45%の所得税がかかります(住民税は一律10%)。
FX(国内業者を利用した場合)や先物、日経225miniなどの投資のように、一律20%の税率の適用はありませんので注意が必要です。
また、雑所得は利益が出た場合には、前述の通り他の所得と合算した上で税金を計算することになりますが、損失が出た場合には他の所得とその損を相殺することはできません。
他にも、株式やFX(国内業者を利用した場合)、先物、日経225miniなどとも、所得の区分が異なるため、利益や損失を相殺することはできないことになります。
ビットコインの利益が事業所得に該当する場合がある?
たまに無料相談会でも聞かれるのですが、このようにビットコインなど仮想通貨の利益が雑所得になると、節税の面から不利であるため、何とか節税する方法が無いものかと考える方も多いのではないでしょうか。
ビットコインの利益が雑所得の他に該当する所得があるとすれば、可能性としては「事業所得」が考えられます。
では、どういった場合に事業所得と考えられるのでしょう。
最高裁では過去に事業所得の判断基準として、
事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう。
と示しています。
つまり、事業所得にしたいから、個人事業としての開業届を提出すればいいというものではなく、例えば
- 事業として反復・継続的に取引を行い、かつ独立した意思をもって営まれている場合
- 事業者が事業用資産を購入した場合
- 相当の資本を投下してマイニングを行っている場合
などが事業所得として考えられるケースとなります。
なお、事業所得に該当する場合には、損失が出た場合でも他の所得とその損失を相殺することが出来たり、相殺する所得がない場合でも3年間、損失の繰り越しをすることが出来ます。
また、青色申告の承認を受けている場合には、最大65万円の青色申告特別控除を受けることも可能です。
仮想通貨はどの時点で課税される?
上記で紹介した国税庁のタックスアンサーでは、
「ビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。」
とありますが、では「ビットコインを使用する」とは一体どの時点を指しているのでしょうか。
無料相談会や、メールでのお問い合わせでも、
「日本円に換金しなければ税金はかからないですよね?」
とおっしゃる方がおられ、ネット上にもそういった情報があるようですが、そのようなことは決してなく、例えばビットコインで資産を購入したり、別の仮想通貨とのトレードを行ったとき、マイニングをしたとき、それぞれその時のビットコインの値上がり益等に課税されることになります。
具体的には、
- ビットコインを日本円に換金した時
→ビットコインの取得価格から換金時の日本円のレートで換算した利益に対して課税 - ビットコインで資産を購入した時
→ビットコインの取得価格から資産を購入した際のビットコインの日本円のレートで換算した利益に対して課税 - 別の仮想通貨とトレードした時
→そのトレードによって増加したビットコインの利益分に対して課税 - マイニングをした時
→マイニングにより取得したビットコインの利益に対して課税
となりますので、充分に気を付けて下さい。
ビットコインなど仮想通貨の税金についてのまとめ
ビットコインの価格はこれを執筆している現在も上昇を続けていることから、これから仮想通貨トレードを始める方も多いかと思います。
また、仮想通貨の税制については明確に定まっていない部分も多く、今後もその動きには注意が必要ですが、それにともなってネット上では、仮想通貨の税金について様々な情報が飛び交っています。
よく、そう書いてあるサイトやブログが多かったから、それが正しいと考える方がおられますが、ネット記事は誰かが間違った情報を発信したことで、それを元ソースとして複製されていく場合も多く、多数派だから正しいとは全く限りません。
見分けるポイントとしては
- 誰が書いている情報なのか?(素人なのか、その分野に詳しい税理士などの専門家なのか等)
- いつ書かれたものなのか?(税法は毎年変わりますので、以前は正しかった情報でも、現在は違っている可能性もあります)
実際に、弊社に相談を寄せられる方の中には、ネット上の間違った情報を元に申告したところ、後に税務署からお尋ねが来たという方も少なくありませんので、もし迷われた際は、弊社に限らず、事前にその分野に詳しい専門家に相談されることをお勧め致します。
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