この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
投資専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
FXや仮想通貨、株式やバイナリーオプション等、投資の税金対策や法人化に精通。
有名トレーダーをはじめ全国の投資家らの税務顧問を多数担当し、専門誌での連載などメディア実績多数。
業務にはオンラインも活用し、北は北海道から南は沖縄の離島までクライアント実績を持つ。
2017年末にはビットコインが一時200万円を超えたりと、一般のニュース等でも話題になったことから、仮想通貨(暗号通貨)の投資を始められた方も多いようで、弊社のクライアント様の中にも、FXや株式投資の他に、ビットコインやその他のアルトコインの仮想通貨取引を始められた方も多くおられます。
これまで弊社のメルマガや当ブログでも、仮想通貨の税金に関する内容を解説してきましたが(右側のカテゴリーからお選びいただくことで一覧が見られます)、この記事を書かせて頂いている現在は、ビットコインの価格も下がっており、世間では損失を出されている方も多いようです。
なので毎月行わせて頂いている無料相談会や、メールでのお問い合わせでも、
「仮想通貨投資の利益が今年はマイナスなんですが、何か手はありますか?損失を繰り越すことは出来ますか?」
といったご相談が非常に多く寄せられます。
そこで今回は、ビットコインなどの仮想通貨取引で、損失が出た場合の税制面での取り扱いにスポットをあてて、解説してみたいと思います。
ビットコインなど仮想通貨取引の所得の区分とは?
確定申告の時期が近づいてくると、
「税金のことは全く分からないんですが、仮想通貨ってどのようにして確定申告すれば良いですか?」
という問い合わせが寄せられます。
結論から申しますと、通常の投資を目的とした仮想通貨取引の場合、それにより得た利益は以下の通り、「雑所得」という区分に該当します。
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。
引用:国税庁ホームページ タックスアンサーNo.1524
ここではビットコインと表記されていますが、基本的に他のアルトコインについても同様に扱われると考えられています。
個人の税金について定めた所得税法では、個人に入ってくる収入をその種類によって10種類に区分しています。
例えば、お給料であれば給与所得、不動産を所有していてその家賃収入であれば不動産所得といった具合ですが、仮想通貨取引の利益が該当する雑所得とは、
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
上記のいずれにも該当しない所得のことで、「総合課税制度」の対象となります。
総合課税制度とは、他の総合課税の対象となる所得(不動産所得、事業所得、給与所得など)と所得の額を合算し、その合計額によって所得税の税率が決まる制度のことですので、例えばサラリーマンの方で仮想通貨のトレードをされていた場合は、その利益と給与所得を合算して、税率を考える必要があります。
ちなみに税金とは、利益や収入にかかるものではなく、そこから経費や控除を差し引いた額にかかるものです。
詳しくは以下にまとめてありますので、あわせてご覧下さい。
※この度、所得税の改正通達があり、FXや暗号資産における経費の範囲が縮小されました。新しい情報はリンク先の記事をご参照下さい。
>>>『【悲報】FXや仮想通貨(暗号資産)の経費が認められなくなった?』
【関連記事】
・『ビットコインなど仮想通貨の確定申告をする際の具体的な計算方法とは?』
・『BTCなど仮想通貨の確定申告では何が経費になる?』
仮想通貨取引でマイナスが出た!他の所得と損失の相殺は可能?
ではビットコインなどの仮想通貨取引で損失が出た場合、どういう対処法があるのかについて解説していきたいと思います。
まず同じ雑所得の同士の所得で相殺する
先ほども少しお話をしましたが、仮想通貨取引で損失が出た場合、まず最初に行うのは、同じ雑所得となる所得との相殺です。
雑所得になるものの例としては、例えばアフィリエイトや転売ビジネスによる所得(事業所得に該当しない場合)、日本の金融庁に登録されていない海外業者を利用した海外FXによる所得などがあげられます。
ただし、雑所得であっても、国内業者を利用したFXや先物、日経225miniなどの「分離課税」が適用されるものとは合算することができませんので注意が必要です。
では、雑所得同士で利益と損失を相殺させても、まだ雑所得全体としてマイナスとなっている場合はどうすれば良いでしょう。
他の総合課税の所得との通算は何でも出来るものではない?
先ほど、雑所得は総合課税制度の対象となり、他の総合課税の対象となる所得と合算するとお伝えしました。
他の総合課税の所得と合算と書くと、仮想通貨取引で出た利益や損失のすべてが合算できるといったイメージを持ってしまう方もおられるかもしれませんが、残念ながらそうではありません。
各所得がプラスの場合でもマイナスの場合でも、すべてが合算できるわけではなく、所得額がプラスの時には他の総合課税制度の対象となる所得と合算をするのですが、所得額がマイナスの場合には、合算できる所得と合算できない所得が別に定められており、雑所得がマイナスの時には他の所得と通算できません。
所得の金額がマイナスの場合に、他の所得の利益と相殺させることを「損益通算」といいますが、損益通算の対象となる所得は、
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
となっていて、雑所得同士で利益と損失を相殺させ、尚マイナスの場合であっても、雑所得は雑所得以外の他の所得の利益とその損失を相殺させることはできませんので、ゼロと同じということになります。
ビットコインなど仮想通貨の損失は翌年に繰り越し出来る?
国内業者を使った個人のFXの場合、雑所得であっても分離課税の適用があり、仮に利益がマイナスであっても、確定申告を行うことで、損失を3年間繰り越すことが可能です(たまに自動的に繰り越しになると思ってらっしゃる方がおられますが、マイナスでも確定申告をしていない場合は繰り越し出来ませんのでご注意下さい)。
なので、無料相談会でも
「雑所得同士で損益通算してもまだマイナスの場合、損失は翌年以降に繰り越せますか?」
というご相談を受けますが、総合課税の対象となる雑所得(仮想通貨取引による損失など)については、その損失を翌年以降に繰り越すことはできません。
つまり、先ほども申しましたが、雑所得が全体としてマイナスとなった場合、それはゼロと同じことになるのです。
仮想通貨FXの損失はどうなるの?
前章でお伝えした通り、国内の証券会社を利用した外国為替証拠金取引(FX)は申告分離課税の対象となり、3年間の損失繰越ができるため、仮想通貨FXについても申告分離課税となるのでは?と考えられる方がたまにおられます。
専門的なことで申しますと、申告分離課税の対象となる取引は、租税特別措置法第41条の14(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)で定められていて、そこには金融商品取引法等に基づいて行われる
- 商品先物取引等
- 金融商品先物取引等
- カバードワラントの取得等
が対象となる旨が定められています。
ただ、仮想通貨FX(仮想通貨の証拠金取引)は、これらのいずれの取引にも該当しないため、申告分離課税の適用はなく、通常の仮想通貨取引と同様、雑所得として総合課税により申告することになります。
つまり、仮想通貨FXの損失についても、前項までと同様の取り扱いになります。
解決策として、法人化することで仮想通貨も損失繰り越しが出来る?
ここまで仮想通貨取引で損失が出た場合、その損失を翌年以降に繰り越すことはできないというお話をしてきましたが、これは個人投資家として所得税法というルールのもと投資を行った場合の取り扱いになります。
一方で、会社を設立し、法人口座で投資を行うという選択肢もありますが、法人で仮想通貨取引を行うと、法人税法という全く違うルールで税金を計算することになるため、その損失についての取り扱いも全く異なります。
個人投資家として取引を行い損失を出した場合には、その損失を翌年以降に繰り越すことはできませんが、法人として取引を行い損失を出した場合には、その損失を翌年以降10年間繰り越すことが可能となります。
つまり、損を出したその翌年から10年間は、その損失の金額分の利益が出るまでは税金がかからないことになるのです
尚、法人として仮想通貨取引を行う場合には、その所得が法人の所得であることが明確にわかるように、銀行口座や仮想通貨取引所にはしっかりと法人名義の口座を開設して取引を行うようにしましょう。
まとめ
FXや株式投資と比べて、ビットコインなどは乱高下が激しいと言われますが、例えば先ほどの、会社を設立して法人口座で取引する方法は、個人での取引と比べて節税面でも有利なだけでなく、万が一、マイナスが出た場合の保険として行っている方も、弊社のクライアント様の中には多くおられます。
「会社をつくるなんて大それたことは私には出来ないよ……」
とおっしゃる方が相談会でもおられますが、書類上のことなので、司法書士に任せておけば自動的に出来上がりますし、現在は資本金1円からつくれますので、実際に弊社クライアントの半分以上の方は、会社員をされながら法人口座で取引をされています(TOPに記載の通り、弊社にご契約の方は会社設立の手数料は当方が負担させて頂きます)。
もちろん誰にでもお勧めするわけではなく、メリットとデメリットを理解した上で考える必要があるかと思いますので、興味のある方は以下の記事もあわせてご覧下さい。
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