この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
投資専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
FXや仮想通貨、株式やバイナリーオプション等、投資の税金対策や法人化に精通。
有名トレーダーをはじめ全国の投資家らの税務顧問を多数担当し、専門誌での連載などメディア実績多数。
業務にはオンラインも活用し、北は北海道から南は沖縄の離島までクライアント実績を持つ。
昨今、ビットコインなどの認知度も高まり、投資家の間でも注目を集めている仮想通貨の取引ですが、弊社のクライアント様の中にも、FXや株などと平行してトレードされている方も多くおられます。
ただ、新しい投資ということもあってか、毎月行わせて頂いている無料相談会やメールでの問い合わせでも、多くの方から様々な質問が寄せられます。
例えば最近多い問い合わせですと、暗号通貨(仮想通貨)はサーバー上で管理されているため(そうでないものもありますが)、取引所が外部からのハッキングを受け、仮想通貨が不正に送金・流出されるといった事件が起こり得ます。
2018年だと、1月には仮想通貨取引所『コインチェック(CoinCheck)』がハッキングを受け、保有していたネムが強奪され、ダークウェブにて別の仮想通貨に交換していたという事件があり、9月には仮想通貨取引所『Zaif』が同じくハッキングを受け、ビットコイン、モナコイン、ビットコインキャッシュが流出するという事件もありました。
では、このような事件が起きた場合に、税金面ではどのように考える必要があるのか、というものです。
仮想通貨取引は比較的新しい取引のため、実は税法面の整備が追いついていない部分もあり、こういった場合の取り扱いについて、明確に定められていない部分もありますが、現状の税法と情報の面から見てどう考えられるのか、順に解説してみたいと思います。
通常の仮想通貨取引による利益は「雑所得」に該当する
通常、仮想通貨の取引により得た利益については「雑所得」として課税の対象となることが、すでに国税庁から発表されています。
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。
引用:国税庁ホームページ タックスアンサーNo.1524より
ここではビットコインと表記されていますが、基本的に他のアルトコインについても同様に扱われると考えられています。
つまり、仮想通貨取引により得た利益は雑所得として、総合課税により税金がかかるということになります。
コインチェックの不正送金事件後、国税庁が課税上の取り扱いを発表
1月の仮想通貨取引所『コインチェック(CoinCheck)』がハッキングを受け、保有しているネム(XEM)が不正に送金される事件の後、4月18日に、国税庁は「仮想通貨交換業者から仮想通貨に代えて金銭の補償を受けた場合」の課税上の取り扱いを発表しました。
コインチェックでは、不正送金されたXEMの補償について、被害を受けた保有者全員に対しXEMを88.549円で換算して日本円で返金するという内容に落ち着きましたが、これに対して、Coincheckの日本円による補償は、XEMを円で売却した場合と同様に雑所得として課税されることとなっています。
仮想通貨交換業者から仮想通貨に代えて金銭の補償を受けた場合
問
仮想通貨を預けていた仮想通貨交換業者が不正送信被害に遭い、預かった仮想通貨を返還することができなくなったとして、日本円による補償金の支払を受けました。
この補償金の額は、預けていた仮想通貨の保有数量に対して、返還できなくなった時点での価額等を基に算出した1単位当たりの仮想通貨の価額を乗じた金額となっています。
この補償金は、損害賠償金として非課税所得に該当しますか。
答
一般的に、損害賠償金として支払われる金銭であっても、本来所得となるべきもの又は得べかりし利益を喪失した場合にこれが賠償されるときは、非課税にならないものとされています。
ご質問の課税関係については、顧客と仮想通貨交換業者の契約内容やその補償金の性質などを総合勘案して判断することになりますが、一般的に、顧客から預かった仮想通貨を返還できない場合に支払われる補償金は、返還できなくなった仮想通貨に代えて支払われる金銭であり、その補償金と同額で仮想通貨を売却したことにより金銭を得たのと同一の結果となることから、本来所得となるべきもの又は得られたであろう利益を喪失した部分が含まれているものと考えられます。
したがって、ご質問の補償金は、非課税となる損害賠償金には該当せず、雑所得として課税の対象となります。
なお、補償金の計算の基礎となった1単位当たりの仮想通貨の価額がもともとの取得単価よりも低額である場合には、雑所得の金額の計算上、損失が生じることになりますので、その場合には、その損失を他の雑所得の金額と通算することができます。
引用:国税庁ホームページ タックスアンサーNo.1525より
Zaifの不正流出事件、その補償と税金の取り扱いとは?
9月に不正アクセスを受け、ビットコイン、モナコイン、ビットコインキャッシュが流出した仮想通貨取引所の『Zaif』は、運営するテックビューロ株式会社が、株式会社フィスコ仮想通貨取引所にZaif事業を譲渡することにより、フィスコ仮想通貨取引所がユーザーの財産を保護することが決まっています。
(株式会社フィスコ仮想通貨取引所の補償を受けるためには、仮想通貨などの譲渡承認の手続きが必要になります。)
この補償についても、基本的には前項で参照した国税庁の発表を基に、補償内容により税金がかかるケースがあると考えられます。
フィスコ仮想通貨取引所では、流出分に相当する仮想通貨などの調達をすでに終えており、ビットコインとビットコインキャッシュについては、調達済みの仮想通貨で補填するとしています。
つまり、ビットコインとビットコインキャッシュについては、消失した仮想通貨に対し金銭での補償ではなく、仮想通貨による補償のため、個人の保有する資産に変化が生じることはなく、それに対し税金がかかることはないと考えられます。
ただし、モナコインについては、市場流通量がビットコインなどと比べて乏しく、消失した数量相当の仮想通貨を調達することが難しかったため、約6割はモナコインで、約4割は日本円に換えて支払うとしています。
この場合、消失したモナコインのうち約4割分は、金銭での補償ということになり、仮想通貨から日本円という異なる資産に変わるため、前項で参照した「仮想通貨交換業者から仮想通貨に代えて金銭の補償を受けた場合」と同様の取り扱いとなり、モナコインの取得価額によっては税金がかかるケースがあると考えられます。
なお、仮想通貨の利益の具体的な計算方法については、以下のリンクをご参照ください。
関連記事>>>『ビットコインなど仮想通貨の確定申告をする際の具体的な計算方法とは?』
まとめ
今回は、仮想通貨の不正流出が起きた際の対処法について解説してきましたが、上記のように、不正アクセス等により流出した仮想通貨に対して補償を受けた場合には、その補償の内容により課税関係が生じる場合があります。
ただし、仮想通貨に関する税金の取り扱いについては、税法上まだ明確になっていない部分も多く、今回の記事も現行の税法と現在公表されている情報を基に、あくまで見解を述べさせていただいたものとなります。
今後、新たな情報が公表されれば、メルマガやこのブログでもご紹介していく予定ですが、このような仮想通貨の流出被害を受けた方で、ご自身での確定申告に自信のない場合には、そのまま放っておくと、本来納める必要のなかったペナルティの税金まで追徴される可能性があります。
関連記事>>>『FXや仮想通貨の無申告や脱税などペナルティの種類と対応策について』
税務署というのは、「ここを突くと取りやすい!」というポイントが見つかれば、一斉に調べにかかる傾向にあり、過去のメルマガでも朝日新聞の記事を紹介しましたが、仮想通貨の税金というのは、いま非常に税務署が目を光らせている分野でもありますので、不安な方は、弊社に限らず、仮想通貨の税金や申告に強い税理士等へ一度相談され、きちんと申告されることを強くお勧めします。
関連記事>>>『知らないと恐い?FXの税務調査の実体を教えます』
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