この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
投資専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
FXや仮想通貨、株式やバイナリーオプション等、投資の税金対策や法人化に精通。
有名トレーダーをはじめ全国の投資家らの税務顧問を多数担当し、専門誌での連載などメディア実績多数。
業務にはオンラインも活用し、北は北海道から南は沖縄の離島までクライアント実績を持つ。
弊社は日本で唯一の、FXや暗号資産(仮想通貨)、株式など、投資の税務に特化した会社ですが、年末が近づいて来ると、日々全国から寄せられる問い合わせの中でも、確定申告に関する質問が一気に増えてきます。
10年前と比べて税法の改正も進み、FXにかかる税金の考え方もかなり明確になってきました。
とは言えまだまだ、お問い合わせやご相談のお話を伺っていても、FXの確定申告についてほとんどご存知ない方や、間違った理解で認識されている方も多く、そのまま申告してしまうと誤った内容で申告することとなり、後に税務署から、追徴課税などのペナルティを課せられる可能性があり得るケースも正直ございます。
せっかく投資で得た利益を、そんな本末転倒なことで逃さないよう、今回はおさらいの意味も含めて、FXの確定申告で予め知っておくべきポイントや注意点と、スムーズに申告いただけるよう、事前に準備いただく書類などを解説したいと思います。
そもそもFXの取引業者によって確定申告の内容が変わる?
さて、説明を進めるにあたって、FXは国内業者と海外業者で確定申告の内容が異なってきますが、厳密に言えば、使用しているFX業者が、日本の「金融庁に登録があるかどうか」の違いになります。
つまり、非常に少数ですが、海外業者でも金融庁に登録があるところをお使いの場合は、税法上国内業者と同じ扱いになります。
ただ一般的に、よく使われる海外のFX業者はほとんど登録がないため、今回は便宜上、金融庁に登録のあるFX業者を「国内業者」、登録の無い業者を「海外業者」と表記して説明させていただきますので予めご了承下さい。
関連記事>>>『海外FX業者の税金はいくらかかるの?間違えたら税務署が来た!』
FXの国内業者と海外業者では何が違うの?
さて、そもそも個人で行うFX取引は、原則として「雑所得」という税金に分類されます。
ただ、上記で国内業者と海外業者では税金の扱いが異なると申しましたが、同じ雑所得であっても、更に「申告分離課税」と「総合課税」に分かれており、異なるルールで税金が課せられます。
どちらに分けられるのかで確定申告の仕方が変わってきますので、それぞれの違いを見てみましょう。
個人の国内業者の場合は?
- 雑所得の中でも「申告分離課税」のルールで課税される
- 税率は一律20.315%(令和19年までは復興特別所得税0.315%を併せて納付)
- 損失が出た場合は3年間繰り越すことが可能(但し必ず繰り越しの申告が必要)
- レバレッジ規制がある(最大25倍)
個人の海外業者の場合は?
- 雑所得の中でも「総合課税」のルールで課税される
- 税率は所得の額に応じて最大55%(住民税含む)
- 損失が出ても繰り越すことは出来ない
- レバレッジ規制が基本的にない
このようにFXにおいては、国内業者の方が税金面では優遇を受けていますが、レバレッジ規制を回避する目的や、中・長期投資であまりスプレッドの影響のない方、トラリピやつなぎ売買など、分散して多くのポジションを持たれたい方、その他、メタトレーダーから直接トレードをされたい方など、海外FXを利用されている方も、弊社クライアント様の中には結構おられます。
ただしその場合、今回のテーマからは少し外れますが、個人と法人とでは税率や繰り越しの可否などが異なってきますので、もし海外業者でFXをされたい方は、以下の記事もご覧になっておかれることをお勧めします。
関連記事>>>『FX法人口座のレバレッジ規制を回避する方法とその注意点とは?』
FXの損失は繰越出来る?
先程、FXの場合は国内業者なら、損失の繰越が3年できると書かせていただきました。
但し、よく勘違いされているのは、損失が出たからと言って自動的に繰り越されるわけではありませんので注意が必要です。
損失の繰越控除を受けるためには、以下の手続きが必要になりますので、該当される方は知っておいて下さい(以下、国税庁『先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除』より引用)。
- 先物取引の差金等決済に係る損失の金額が生じた年分の所得税につき、当該事項を記載した「平成・令和 年分の所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」及び「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付した確定申告書を提出すること。
- その後において連続して上記の申告書付表を添付した確定申告書を提出すること。
- この繰越控除を受けようとする年分の所得税につき、上記の申告書付表及び計算明細書を添付した確定申告書を提出すること。
上記、3点の要件全てを満たす必要があります。
つまり、確定申告書に「付表」と「計算明細書」を添付して申告する必要があり、その後は連続して「付表」を添付し、確定申告をしなければ損失の繰越控除を受けることは出来ません。
詳しくは以下の記事をご参照下さい。
関連記事>>>『そんなバカな!国内FXでも過去の損失を繰り越せないケースがある?』
損失を繰越す際に経費はどうなるの?
雑所得は簡単に言うと「利益 – 経費 = 所得」となり、この所得に税金がかかってくるとお伝えしましたが、原則これは変わりませんので、例え利益がマイナスであっても必要経費はもちろん差し引くことが可能です。
これについても過去にまとめてありますので、こちらをご参照下さい。
関連記事>>>『税理士が教えるFXの確定申告で損失繰越しする際の注意点とは?』
FXの経費には何がある?
※この度、所得税の改正通達があり、FXや暗号資産における経費の範囲が縮小されました。新しい情報はリンク先の記事をご参照下さい。
>>>『【悲報】FXや仮想通貨(暗号資産)の経費が認められなくなった?』
こちらも確定申告の時期が近づいてくると、非常に多く寄せられる質問ですが、雑所得の経費となるものには税法上ルールが定められています。
ただその内容は具体的に「経費として計上できるのはコレとコレです」と書かれているわけではなく、要約すると
「FXで利益を上げるために直接要した費用の額については必要経費と考えることが出来る」
といったものです。
では計上できるかどうか判断する際のポイントですが、以下の2点です。
- FXで利益を上げるために直接関連があること
- 経済的合理性があること
この「直接」というのがミソで、恐らく一般の方が思っておられる範囲よりも狭いものとなっています。
また、直接関連があったとしても、経済的合理性がなければ税務調査で否認される可能性もあり得ます。
こちらも以下に詳細をまとめてありますので、宜しければご参照下さい。
関連記事>>>『危険?FXや仮想通貨の確定申告で経費を計上する際のポイントとは?』
FX以外の所得と相殺できるの?
例えばFXで損失が出てしまった場合、他の利益と損益通算したいこともあるかと思いますが、税務上、同じグループであれば利益や損失を合算することが出来ます。
まず、FXでも国内業者と海外業者は同じ雑所得ではありますが、上記でお伝えした通り、税務上扱いが異なるため利益や損失を合算することは出来ません。
それでは具体的にどういったものが同じグループに入るのでしょうか。
国内業者のFXと同じグループのものは?
- 日経平均先物
- 日経225mini
- 商品先物 (取引所で取引されるもの)
などになります。
海外業者のFXと同じグループのものは?
- 暗号資産(仮想通貨)の取引
- YouTuber
- アフィリエイト
- せどり転売や物販ビジネス
などになります(但しビジネスは事業所得ではなく雑所得として行っている場合のみ合算可能です)。
確定申告が必要な人とは?
では、どういった方が確定申告が必要になってくるのかですが、結論から申しますと、1年間の所得(FX以外にも所得のある方はそれら全て)の合計額が、全ての所得控除の合計額を超える場合には、原則として確定申告が必要になります。
所得控除には、社会保険料控除や生命保険料控除、扶養控除などといったいろいろな種類がありますが、最低ラインは基礎控除の48万円です。
尚、よく聞く「20万円までは申告不要」という条件は、年末調整で納税が済んでいる給与所得者(サラリーマン等)の特例となりますので、ご注意ください。
また、同じ給与所得者でも、2箇所以上からお給料を貰っているといった方は、上記の特例はあてはまらず、例えFXの利益が1円でも確定申告が必要です。
ただ、給与所得者の特例で申告不要の条件に当てはまる人が、医療費控除(還付)のために確定申告をする場合、医療費控除の額よりもFXの所得の方が多い場合は、かえって税額が増える場合もありますのでご注意ください。
FXの確定申告に必要な申告書は?
こちらは、国内FXの場合は、利益が出ている場合と、損失が出ている場合(損失の繰越がある場合)とでは提出する書類が少し異なりますので、お近くの税務署や国税局のサイトから手に入れられる際はお気を付け下さい。
FXで利益が出ている場合
- 確定申告書B (第一表・第二表)
- 確定申告書第三表 (分離課税用)
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
FXで損失が出ている場合
- 確定申告書B (第一表・第二表)
- 確定申告書第三表 (分離課税用)
- 確定申告書付表 (先物取引に係る繰越損失用)
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
上記以外に、FX取引での利益や損失を計算するために証券会社から交付される年間取引報告書(業者によって呼び方は異なります)や、取引明細などを予め準備しておくとスムーズでしょう。
また、サラリーマン等の給与所得者の方は源泉徴収票を用意しましょう。
まとめ
これまでFXの確定申告をされたことのある方にとっては、既にご存知のことも多かったかと思いますが、他に合算できるものの種類や、損失を繰り越しする為には、利益が出ていなくても続けて申告しておかないといけないことなど、結構、間違えておられる方も多い印象です。
知らなかったがために損をしていては勿体ないかと思いますので、事前に基本的なことを押さえた上で、FXの確定申告に臨むようにしましょう。
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