この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
投資専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
FXや仮想通貨、株式やバイナリーオプション等、投資の税金対策や法人化に精通。
有名トレーダーをはじめ全国の投資家らの税務顧問を多数担当し、専門誌での連載などメディア実績多数。
業務にはオンラインも活用し、北は北海道から南は沖縄の離島までクライアント実績を持つ。
FXのレバレッジ規制後、海外口座を使ったFXや、また決済時間規制の問題で、海外業者にてバイナリーオプションの取引をされている方も増えてきているようで、弊社の無料相談会でもよく質問をされるのですが、海外業者を使ってトレードをされるにあたっては、必ず知っておかなければならない法律があります。
知らなかったでは済まされず、後から税務署に指摘をされて大変な目に遭う可能性もありますので、今回はその一つを解説していきましょう。
国外財産調書制度とは?
海外業者を利用しておられる投資家の皆さんは「国外財産調書制度」というのをご存知でしょうか。
平成25年12月31日の時点で、国外財産の合計額が5,000万円を超える居住者は、平成26年3月17日までに「国外財産調書」に「国外財産調書合計表」を添付して提出しなければならないというものです。
FXのレバレッジ規制や、バイナリーオプションの決済規制を回避する目的で、海外の証券会社を利用する方もおられますので、海外に財産を持っておられる方も多いかと思いますが、当然、海外の証券会社に預けてある証拠金(預託金)も国外財産としてカウントしなければなりません。
FXやバイナリーオプション以外で国外財産に含まれるものは
FXやバイナリーオプションなどの投資以外で、国外財産に含まれるものとしては、「土地」「建物」「山林」「現金」「預貯金」「有価証券」「貸付金」「未収入金」「書画骨董及び美術工芸品」「貴金属類」「現金、書画骨董及び美術工芸品、貴金属類以外の動産」「その他の財産(無体財産権、株式に関する権利、預託金など)」
がありますので、FXの証拠金等以外にも海外に財産がある方は、それら全ての合計額で判定する必要があります。
また、海外の証券会社を利用しておられるトレーダー様の中には、ドル建てなど円以外の通貨をベースにしている方も少なくないかと思いますが、同法では外貨で表示されている財産のレート換算の方法についても独自に定めています。
政令(※)によると、国外財産の価額が外国通貨で表示される場合における当該国外財産の価額の円換算は、
(1) 国外財産調書の提出義務者の取引金融機関が公表するその年の12月31日における最終の為替相場による。
(2) (1)の「為替相場」は、円換算を行う場合の外国為替の売買相場のうち、 その外貨に係る、対顧客直物電信買相場(TTB)又はこれに準ずる相場をいう。
となっており、一般的に、ドル建て等でトレードされている場合とは異なります。過去の記事でもご紹介しましたが、FXやバイナリーオプションを海外業者でやられている方は、トレード毎のレートで円換算する必要がありますので、詳しくは関連記事>>>「間違えると恐い!海外FXのレート換算のやり方とは?」をご覧下さい。
※政令の正式名称は、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成25年政令第115号)による改正後の内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令」
5,000万円もないから関係ない?確認すべきポイントとは
ただ、海外に5,000万円を超える財産なんて無いから、自分には関係ないと思われた方も多いかも知れませんが、ここで重要なのは何を見るかです。
海外FX口座にある証拠金などは、国外財産として分かりやすいですが、例えば他にも金融機関に預金口座を持っている場合、日本の銀行か海外の銀行か、又は、円預金か外貨預金かではなく、実は、その預金口座のある金融機関の支店が、国内にあるのか国外にあるのかが判断の基準となります。
つまり、日本の金融機関であっても、海外支店への円預金は国外財産として報告の対象になるということです。
また、電子決済サービスを利用している場合、これらはネット上で口座開設を行うため、預金口座のように支店がどこにあるのかで判断することは出来ませんが、決済サービスの運営事業者の所在地が海外である場合には、国外財産として報告の対象となります。
他にも、株式や債権などはそのモノがどこにあるのかではなく、発行者が誰、又は、どこなのかということによって国外財産かどうかを判断することになります。
こういった内容は、ほとんど目にされる機会はないかも知れませんが、要は、自分が該当しているにしろ、していないにしろ、重要なのは、何を基準に判断されるのかをしっかりと理解しておく必要があるということです。
国外財産調書を申告した場合としなかった場合
申告しなかった場合の罰則について
今回、罰則規定が適用されたケースも明らかになりましたのでご紹介したいと思います。少し難しい表現になって恐縮ですが、まとめて説明しますと、
金融商品取引法違反で起訴された被告が、海外に多額の財産を保有しながら、法律で義務付けられた国外財産調書を堤出しておらず、申告漏れを指摘された所得税の内、国外財産に伴う所得については、通常より5%多い15%の過少申告加算税が適用されました。
そもそも、国外財産調書の提出が提出期限内にない場合、又は提出期限内に提出された国外財産調書に、記載すべき国外財産の記載がない(もしくは不十分な)場合、
その国外財産に関して所得税の申告漏れが生じたときは、過少申告加算税等が5%加重され、更に、国外財産調書に偽りの記載をして提出した場合、又は、国外財産調書を正当な理由がなく、提出期限内に提出しなかった場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する、という罰則規定があるのですが、この制度が開始されてから国外財産調書の未提出により、加算税が加重されたケースは今回が初となります。
きちんと申告すれば減税される
今回は罰則が適用されたお話を致しましたが、国外財産調書制度には、この制度を守って、きちんと調書の作成及び提出を期限厳守で行う納税者に対しては、国外財産調書に記載がある国外財産に関して、所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても、過少申告加算税等が5%減額されるという特典がついています。
注意!確定申告とは関係ありません
最後に注意していただきたいこととして、これらの調書や合計表は、提出期限が3月15日と確定申告の提出期限と同じであることから、確定申告の添付書類と誤解されている方も多いようです。
そのため、確定申告をする必要がなければ「国外財産調書」と「国外財産調書合計表」の提出は不要と考えがちですが、確定申告の有無に関わらず、12月31日の時点で国外財産の合計額が5,000万円を超える居住者という条件をみたせば、「国外財産調書」と「国外財産調書合計表」の提出が必要になります。
例えば、海外の個人口座でトレードをされていて、ポジションを決済せず持ち越したため、今年は確定申告が不要だといった方は、注意が必要です。
最後に、国税庁のホームページで公開されている各様式のURLを記載いたしますのでご参照下さい。
▼国税庁ホームページ「[手続名]国外財産調書(同合計表)」
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/annai/2506.htm
▼国税庁ホームページ「国外財産調書」
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/annai/pdf/2506_01.pdf
▼国税庁ホームページ「国外財産調書合計表」
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/annai/pdf/2506_03.pdf
▼国税庁ホームページ「国外財産調書の記載例」
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/annai/pdf/2506_02.pdf
海外FXや投資で他にも気を付けるべきポイントとは?
今回は「国外財産調書制度」について解説しましたが、海外FXやその他の投資運用をされている方は、他にも気を付けるべきポイントがありますので、以下の関連記事もご確認下さい。
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