法人口座がない業者

ここ数年、たまに寄せられるお問い合わせの中に、

「法人口座がない業者を使いたいんですが、その場合はどうすれば良いですか? 個人口座を使っておいて、法人に利益を付け替えたり出来ますか?」

といった質問があります。

これは後にお話する、ある理由がほとんどなのですが、この辺りは曖昧に処理してしまうと、かなり高い確率で後から税務署に指摘をされ、ペナルティーの税金を払わされる可能性がありますので、そんなことにならないよう、今回は法人口座がない業者を使いたい場合の対処法について解説していきます。

 

そもそも海外業者を使う場合は法人化しないと利益が残らない?

例えばFXの場合ですと、国内業者の個人口座はレバレッジが一律25倍、法人口座は平成29年3月1日以降は、過去の相場変動に基づいた変動式で、毎週金融庁から倍率が発表されますが、ドル円等でも概ね50倍前後といったところです。

それらを回避するため、レバレッジ規制のかからない海外業者を使いたいとおっしゃる方も多くおられますが、レバレッジ規制を回避するだけなら個人口座でも良いのでは?と思われる方がおられるかも知れません。

もちろんそれだけなら個人口座で構わないのですが、そもそも投資の目的は収益を上げることです。

いくら利益が上がっても、税金がたくさんかかっていては、差し引きして残る金額は少なくなります。

国内業者の個人口座は、申告分離課税で一律20%の税率ですが、「金融庁登録業者一覧」に載っていない、レバレッジ規制のかからない海外業者には適用されません。

「金融商品取引法第2条第22項第1号から第4号までに掲げる取引で、同項に規定する店頭デリバティブ取引に該当するもの(第三十七条の十二の二第二項第一号に規定する金融商品取引業者又は登録金融機関を相手方として行うものに限る。)をいう」(一部抜粋)

つまり、その場合は総合課税の雑所得になり、

  • 会社からの給与など、他の総合課税の所得と合算し最大55%の税金がかかります。
  • 総合課税の所得でも、雑所得以外の所得とは損失を相殺することはできません。
  • 国内の証券会社を利用したFXの利益や損失は申告分離課税なため、それらと相殺はできません。
  • 損失を繰り越すことはできません。

ということになります。

それらを回避するために、レバレッジ規制のかからない海外業者を使う場合は、会社設立をして法人口座で行うことで、そもそも法人税の実効税率(法人税・事業税・住民税などを考慮した税率)は最大で約34%(利益が800万円以下であれば、約21~23%)になります。

更に法人の場合は、個人では出来ない節税対策もたくさん存在し、仮に損失を出しても最大10年間は繰り越すことが出来るようになります。

中には「会社設立だなんてなんだか大変そう……」と思われる方もおられるようですが、実際には資本金は1円から設立できますし、弊社サービスにお申し込みの方は、会社設立にかかる手数料は弊社が負担させて頂いていますので、あとは任せておくだけで自動的に設立が完了します

(その他、法人のメリットとデメリットを説明しながら、個々の状況を伺った上で、ご希望の方にはどれだけ節税できるか無料でシミュレーション資料をお作りしていますので、詳しくはお問い合わせ下さい。尚、こちらから勧誘やセールスを行うことは一切ございません)。

それら、海外業者の税金については以下の記事にまとめてありますので、詳しくはこちらをご参照下さい。

関連記事>>>『FX法人口座のレバレッジ規制を回避する方法とその注意点とは?』

特に多いのはXMとハイローオーストラリア!

レバレッジ規制や節税対策で、海外業者の法人口座を検討される方は多く、弊社のクライアント様の中にも使われている方がたくさんおられますが、冒頭の問い合わせについて特に相談が多いのが、FX業者では「XM」と、バイナリーオプションの業者では「ハイローオーストラリア」です。

XMは、日本語サポートも充実しており、スプレッドの狭い「ナノスプレット口座」や、実際に取引に使えるボーナスキャンペーンも頻繁に催していることもあって、非常に人気の高い業者ですが、2018年の年明け頃から、法人口座の開設が出来なくなっています(今後どうなるかは未定のようです)。

あとよく聞くのが、XMにしてもハイローオーストラリアにしても、

「そこでしか使えないEAや手法があるので、そこしかダメなんです。」

とおっしゃる方が結構おられます。

法人口座を開けない業者で取引する場合の対処法とは?

さて、ここまで法人口座がない(開設できない)業者について、よくあるご相談やケースをお話してきましたが、ここからはその対策について解説していきたいと思います。

法人口座がある別の業者を使う

これは最も簡単且つ、税務リスクがほぼない方法ですが、法人口座がなければ、法人口座のある業者を使うということです。

先ほどのXMなどは、日本でも有名で、ナノスプレッド口座もあるため、短期売買を行うトレーダーさんの中でも人気がありましたが、弊社クライアント様の中でも使われている方の多い、同じような業者でいうと、「AXIORY(アキシオリー)」などがあります。

但し弊社では、個別の業者をお勧めすることは基本的にしておりませんので、業者選びは自己責任でお願いしておりますが、以前、実際に使われた感想を、トレーダーさんに書いて頂いておりますので、興味のある方はご覧下さい。

関連記事>>>『海外FXのAXIORY(アキシオリー)に法人口座を開設してみた!』

準備がないだけで法人名義で登録できるところもある

これは以前あったケースなのですが、一時期、海外のバイナリーオプションの業者の中には、

「法人口座というものの用意はないが、口座開設の氏名の欄に、法人名を入力してもらうことで、法人名義で登録いただくことは可能です。」

という業者が幾つかありました。

ちなみに、バイナリーオプションの業者は淘汰されたり、新たに設立されたりが比較的頻繁に行われているので、弊社のクライアント様が使っておられたそれらの業者は、既に存在していません。

これは後に解説しますが、税務上、法人名義で取引を行うに越したことはないので、もし取引業者のサイト等を見ていても、法人口座の申し込み窓口が見当たらない場合は、個人の申し込み窓口しかなくても、名義を法人名で登録することは可能か、事前に各業者のサポート担当へ問い合わせてみられることをお勧めします。

どうしても特定の業者を使いたい場合はリスクを覚悟の上で?

冒頭でも少しお話しましたが、XMやハイローオーストラリアなど、そこでしか使えないEAや手法を使う必要のある方は、

「個人口座であげた利益を法人のものとして申告できませんか?」

ということをよく言われます。

個人と法人は法律上は別人格になりますので、個人名義の口座を法人のものとして利用することは、状態としては他人の口座を自分のものとして利用していることと同じですので、問題がないとは言えません。

税務署から指摘を受ける可能性もあり、税務調査が入った時のことを考えても、原則的にはリスクの高い行為と言えますし、個人口座での利益を法人のものとして申告することは難しいと言えるでしょう。

ただどうしても、法人口座がない業者を使い、法人として申告したい場合には、後にご紹介する否認された時のリスクを承知した上で、最低限、そこの業者には法人名義の口座の取扱がないことを明確にしておくことは必要でしょう。

例えば、

  • 法人口座の取扱いがないことが明記された業者のホームページをプリントアウトしておく
  • カスタマーサポート等に問い合わせた際の回答(法人口座の取扱がない、もしくは、開設できない旨)をプリントアウトしておく

など、自分の都合ではなく業者の理由で法人口座が開設できない明確な根拠を残しておくようにしましょう。

当然のことながら、法人口座の取扱はあるが、法人口座を開設する手続きが煩雑で面倒だから……、のような理由は認められません。

更には、税務調査で指摘を受けた際に、根拠があって個人口座を法人口座として利用していると説明できるような資料や書類を、上記以外にも作成しておくことも、対策の1つとして考えられるかもしれません。

ただし、これらの対策をしていたからといって、必ずしも法人として申告して大丈夫ということではもちろんありませんので、その点は十分に注意が必要です(あくまで自己責任です)。

もし否認された場合はどうなるの?

もし、法人口座のない業者の個人口座を使い、法人の所得として申告していたものの、税務署から認められなかった(否認された)場合には、それは個人の所得だと判断されることになります(厳密には税務調査や裁判で戦うこともできますが、ここでは割愛します)。

その場合、法人としては、法人の所得でないものを申告して、その分の税金を納めているわけなので、納めた税金を返してもらうことになりますが、問題は個人の税金です。

本来は個人の所得であるものが申告されていないわけなので、個人としては無申告の状態になっているわけです。

なのでトレードで利益が出ている年に、トレード以外の収入があれば、それらとトレードの利益を合算して、本来の個人の税金を計算し直します。

そうして計算した本来の税金と、既に納めている税金の差額を、不足分として追加で納めることになります
(この本来納めるべき税金の部分だけでも、法人で申告することにより、個人で申告するよりも税金が少なくなっていることが考えられますので、返してもらった法人税等以上に、税金が高くなるといったケースも十分に考えられます)。

更に、先ほど申し上げた通り、個人ではトレードの利益が無申告となっているわけなので、それに対しては、「加算税」と「延滞税」というペナルティが課せられます。

加算税としては、その年にトレード以外の収入がなく、確定申告をしていなかった場合には無申告加算税が、その他の収入があるなどの理由で確定申告をしていた場合には、過少申告加算税がかかります。

あと、本来の税金を納める期日から、不足分の税金を納めるまでの間の日数に応じた延滞税がかかります。

これらを考えると、法人の所得であると申告したものが、これは個人の所得であると否認されることは、とても大きなリスクであると言えるでしょう。

関連記事>>>『FXや仮想通貨の無申告や脱税などペナルティの種類と対応策について』

まとめ

今回は、法人口座がない海外業者で取引したい場合、どうすれば良いのかについて解説してきました。

法人と個人とは本来別人格ですので、業者都合により、法人取引が出来なかったにせよ、個人の取引を計上することは、上記にも書きましたがリスクを伴います。

ちなみに税務署から指摘を受けるのは、申告時ではなく、後の行政指導か税務調査の時になり、その際に、どれだけ客観的な証拠や資料を揃えて、税務調査官を納得させられるかになりますので、これをしておけば必ず大丈夫ということでもありませんし、仮にAさんの時は通ったが、Bさんの時にも必ず認められるということは言えません。

それらを踏まえた上で、慎重に判断される必要があるでしょう。

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