この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
投資専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
FXや仮想通貨、株式やバイナリーオプション等、投資の税金対策や法人化に精通。
有名トレーダーをはじめ全国の投資家らの税務顧問を多数担当し、専門誌での連載などメディア実績多数。
業務にはオンラインも活用し、北は北海道から南は沖縄の離島までクライアント実績を持つ。
ビットコインを代表とする仮想通貨のバブルにより、いわゆる「億り人」といわれる、仮想通貨の資産価値が数億になってしまったという方がおられることは、各種報道で目にされた方も多いでしょう。
事実、弊社の「節税・申告代行サービス」へも、仮想通貨で非常に多くの利益を上げられた方々から、お申し込みを頂戴しています。
また一方で、平成27年度の税制改正により、平成27年7月1日以後に、国外転出をする居住者を対象とした「国外転出時課税制度(いわゆる出国税)」が導入されました。
これらは一見、全く関係のないことのように思えるかも知れませんが、気になることとしては、
「じゃぁ仮想通貨は国外転出時課税制度の対象資産に該当するのかどうか?」
ということが問題になってくるでしょう。
そこで今回は、仮想通貨がこの「国外転出時課税制度」の対象資産に該当するのかどうか、実際のところを解説していきましょう。
そもそも国外転出時課税制度(出国税)とは?
平成27年度の税制改正で導入された「国外転出時課税制度」ですが、これはそもそも国内の資産が海外に流出してしまうキャピタルフライト対策として導入されたという背景があります。
どういうことかと申しますと、日本国内では、株式や投資信託などの有価証券の売却益に対して20.315%の税金が課税されます。
しかし、海外には有価証券の売却益に対して課税をしない国や地域があるため、含み益のある株式等を保有したまま、キャピタルゲイン(売買差益)に対して課税されない制度の国や地域に移住し、移住先で株式等を売却すれば、株式等の売却益に対して税金が課されない、つまり課税逃れが可能だったというわけです。
ただそれが行われると、税収の減少や国内の資産が海外に流出してしまうといった日本の経済にとっても問題となる点が多く、これらを防ぐために、今までは課税されなかった出国時の未実現利益の部分に対して、特例的に課税をすることとなりました。
これが国外転出時課税制度(いわゆる出国税)制度導入の背景なのです。
国外転出時課税制度の対象者や対象資産とは?
この「国外転出時課税制度」ですが、平成27年7月1日以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます)をする、一定の居住者が1億円以上の有価証券等(以下「対象資産」といいます)を所有等している場合には、その対象資産の含み益に税金を課するとされています。
つまり、国外転出をするすべての人、すべての資産が対象となるのではなく、それらには一定の条件があることになります。
ちなみに、国外転出とは国外に住所及び居所を移すことをいうため、短期の海外旅行などは国外転出時課税制度の対象にはなりません。
対象者はどのような人なのか?
国外転出時において、次の1.及び2.のいずれにも該当する居住者が、国外転出時課税の対象者になるとされています。
- 所有等している対象資産の価額の合計が1億円以上であること。
- 原則として国外転出をする日前10年以内において国内に5年を超えて住所又は居所を有していること。
つまり、日本にずっと住んでいる日本人の方であれば2.の条件はほぼ満たしていることが多いかと思いますので、1.の条件である対象資産を1億円以上保有しているのかどうかがポイントになってきます。
対象になる資産について
「国外転出時課税制度」の対象資産については、所得税法第60条の2で定められています。
税法の条文はとても難しい表現で記載されていて、結局何が対象資産になるのか全くわからないような書き方をされていますので、その内容を要約して書き出すと概ね次の資産が対象資産になることになります。
- 有価証券(株式、投資信託等)
- 匿名組合契約の出資の持分
- 未決済の信用取引
- 未決済の発行日取引
- 未決済のデリバティブ取引(先物取引やオプションなど)
もし興味のある方は、下記電子政府の法令データ提供システムで条文を確認することができますので、よかったら参照してみてください(とても読む気にならないような気もしますが…(笑))。
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340AC0000000033
ビットコイン等の仮想通貨は国外転出時課税制度の対象資産になるの?
では、本題の仮想通貨は国外転出時課税制度の対象資産になるのかどうかについて見ていきましょう。
対象資産に該当するかどうかは、前述の対象資産に含まれるかどうかで判断されることになりますので、まずは、仮想通貨とは法的にどのようなものなのかを確認したいと思います。
仮想通貨の定義については、資金決済法第2条第5項で規定されています。
(定義)
第二条
5 この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
【資金決済法第2条第5項より】
これらを見ると、資金決済法第2条第5項で定められた仮想通貨については、所得税法第60条の2で規定する対象資産に含まれていません。
つまり現状では、いわゆる仮想通貨については「国外転出時課税制度」の対象資産には該当しないこととされているのです。
まとめ
ここまで、「国外転出時課税制度」について詳しく解説してきましたが、ビットコインなどの仮想通貨で利益を上げた方が、1億円以上の暗号通貨を有していたとしても、その他に対象資産を有していない限り、国外へ転出することになっても、その時点で税金が課されることは現在はありません。
ただし、仮想通貨に関する税法については明確に定まっていない部分も多く、また、仮想通貨自体も今後様々なタイプのものが出てくることも予想されます。
本記事はあくまで平成30年1月現在での法令・情報を基に判断しておりますので、実際に国外転出を検討される場合には、保有している仮想通貨の種類ごとに最新の法令・情報に照らして判断していくことが重要だと言えるでしょう。
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※上記の内容は記事発行時のものです。税法は毎年変わります。現在のリアルタイムな税金対策の内容や、何かご不明な点がございましたら、お電話や以下のメールフォームからお気軽にお問い合わせ下さい。また、今よりどれだけ節税できるかの目安となる「シミュレーションのサンプル資料」を無料で差し上げております(もちろん相談されても、こちらから契約を迫ったり、セールスや勧誘等を行う事は一切ございませんのでどうぞご安心下さい)。