この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
投資専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
FXや仮想通貨、株式やバイナリーオプション等、投資の税金対策や法人化に精通。
有名トレーダーをはじめ全国の投資家らの税務顧問を多数担当し、専門誌での連載などメディア実績多数。
業務にはオンラインも活用し、北は北海道から南は沖縄の離島までクライアント実績を持つ。
インターネット上の投稿を見ていると、たまにFXで損をされている人が「もう破産だ〜」などブログで叫んでおられたり、「万が一損が出たら自己破産すれば良い」などと投稿されている方もおられますが、それは大きな間違いで、実際にはそれだけでは終わりません。
よく自己破産をすれば全ての債務が帳消しになると思ってらっしゃる方も多いですけれど、結論から申しますと、FXに関してはそれは通用せず、その後も免除されずに払い続けることになります(以下に実例を踏まえて詳しくご紹介します)
実際に以前、弊社の無料相談会に来られた方にも、そんな間違った考えでいて、自己破産をした後も税務署職員が訪ねて来て、贅沢品を買ってないか、もし買っていたならその分で税金を払えと毎年督促にやってくるという方がおられました。
もちろん事前に対策をしておくことで、そんな悲惨な目に遭わずに済むケースも多くありますので、今回は実際にあった事案を元に、それぞれに注目すべきポイントや間違えやすい内容、また、それらを回避するためのリスク管理について解説したいと思います。
実話!FXの破産者や脱税の体験談とは?
そもそも破産をするということは税金が払えない状態かと思いますが、似た内容としては、FXの利益を脱税した場合、その脱税額が1億を超えると刑事罰になります。間違った認識をしないために、それぞれに注目すべきポイントがありますので、以下に過去の脱税事案を何件かご紹介していきましょう。
FX4億円脱税主婦の事件
これは非常に有名な事件で、その後に修正申告をされ、今では4億円脱税主婦として雑誌などのマスコミに出られたり、FXの取引手法を販売されたりしているので、ご存知の方も多いかも知れません。
ただ、税務のことで言うと、注目すべきは
『この主婦の夫は「申告しなかったのは取引について知識がなかったから。本人も反省している」と言っています。』
という点です。
つまり、「知らなかったから」「ネットにこう書いてたから」は、税金の世界では通用しないということです。
よく皆さんからのご相談を伺っていますと、「ネット上で見たんですが……」とおっしゃる方がおられますが、我々専門家からすると、特にブログなどで拡散されている内容には、いい加減な情報や、内容が断片的であったり、情報が古いものも多く存在していますので(税法は毎年変わります)、読まれた方はそれを鵜呑みにせず、最低でも
- 誰が書いたものなのか(税務の専門家なのか、素人なのか)
- いつ書かれたものなのか(既に変わっている場合があります)
を、しっかりとチェックした上で、専門家に確認することをお勧めします。
ポイントとしては、複数のブログに書かれているからと言って、それが正しいということには全くなりません。
会社役員が脱税後、海外へ移住したが捕まった理由とは?
これは、ある会社役員が3億6000万円を申告せず、1億4000万円を脱税した事件です。
この役員は、慌てて税金が安い国へ移住しましたが、間違った知識が通用するはずも無く、その後あえなく逮捕されています。ここでの注目すべき間違いポイントは
- FXは申告しなくてもバレない
- 海外へ逃亡すれば大丈夫
という点でしょう。
弊社ではFXの税務調査にも何度も立ち合っていますが、以前より、FXの利益を税務署はしっかりと把握していました。今後はマイナンバーも導入され、より把握しやすくなるでしょう。
また海外へ逃亡して、日本の非居住者になれば大丈夫というのも非常に楽観的な内容だと言えるでしょう。
この事案については、FXの税金に詳しい税理士として当時取材をいただき、以下に詳しくまとめていますので、併せてご確認下さい。
関連記事>>>『FXは確定申告をしないと脱税?実際にあった破産体験談とは?』
会社社長が税金と罰金で2億8000万円を請求された事案
この方は会社の社長をされていて、2007年にはFXの利益が10億円に達しました。ここでやめていれば問題なかったのですが、実際にはそうはいかず、その後もFXを続けられ、2008年のサブプライムショックで大きな損失を出されて税金が払えず、2009年に東京国税局査察部が調査に入り所得税法違反(脱税)容疑で告発されています。
この事案でのポイントとしては
- 事前に税金対策をしていなかった為に、トータルで損を出していても、それまでの利益に対して税金がかかってきたということ
- 今回の場合、14.5%というとんでもない高利の金利(延滞税)がかかるということ
この二つがあげられるでしょう。
特に当時の税法でいうと、総合課税で個人の場合は損失の繰越が出来ませんでしたので、12月31日を超えてから損失を出した場合、トータルではマイナスでも、それまでの利益にはしっかりと税金がかかってきますので、「お金はないけど税金は払わなければならない」という悲惨な状態になった例です。
これは、事前に税金対策をしておけば全く問題なかったケースです。
ちなみに、海外のFX業者の個人口座で取引されている方は、総合課税になる場合が多く、現在でも上記のようなことが起こりえますので。事前に対策をしておかれることをお勧めします。詳しくは以下の記事をご覧下さい。
関連記事>>>『税理士が教えるFXの確定申告で損失繰越しする際の注意点とは?』
税務署から指摘されやすいFXの税金のよくある間違いとは?
さて、前項で脱税事案をご紹介させて頂きましたが、修正申告をされた方もおられますけど、その時に現金がなければもちろん払えませんので、破産されている方もおられます。
間違った認識をしていると、当然リスクとなり得ますので、この章では税務署から指摘されやすい、FXの税金のよくある間違いについて解説していきます。
事前に把握され、本来払わなくて済む税金を追徴されることのないよう気を付けて下さい。
そもそもFXの債務は自己破産しても免責されない?
まず自己破産についてですが、自己破産をすれば、すべての債務が免除されるのかというとそうではありません。
破産法第252条第1項では、免責が許可されない場合の事由が規定されているのですけども、同項第4号には、
「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」
とあり、投資による債務はこれに該当すると考えられます。
ただし、上記の事由に該当する場合でも、裁量免責と言って自己破産に至った経緯を考慮し、裁判所の判断で免責が認められるケースも稀にあります。
「(前略)裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して、免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる」(破産法第252条第2項)
つまり、FXトレードによる債務は原則免責が許可されないが、最終的にはケースバイケースだということでしょう。
破産法では税金は非免責債権である
冒頭でもお伝えしましたが、もう一つ間違えてはいけないのが、トレードによる債務の免責についてではなく、税金の免責についてです(ちなみに弊社は債務整理の専門家ではありませんので、もし詳しく知りたい方は、債務問題に詳しい弁護士や司法書士に相談されることをお勧めします)。
破産法では、自己破産をしても免責されない債権(非免責債権)が規定されているのですが、実は税金は非免責債権なのです。
「免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない」(破 産法第253条第1項)「租税等の請求権」(同項第1号)
つまり、先ほど実際にあった事案でご紹介した会社社長は、今後数十年にわたって未納分の税金を払い続けることになります。
更に、この事案で見えてくることとしてよくあるのが、税務調査は利益が出たときに来るのではなく、利益が出た後、税務署に申告(無申告の場合も含む)をし、その申告書(無申告の場合は証券会社等の資料)を元にやって来ますので、調査で追徴課税が確定したときは、損失を出してしまってお金が無くなっているというケースが多いのです。
だからこそ、サイトトップやDVDでお話ししている、税金対策や税務調査対策というのは、利益が上がってからではなく、上がる前からきちんと行っておく必要があるというのはこういう理由からなのです。
FXの税金は申告しなくてもバレないは大間違い!全て筒抜けの仕組み
弊社の無料相談会でも、たまに「利益がいくらまでなら申告しなくてもバレないですかね……?」とおっしゃる方がおられますが、少額だからバレないということは全くありません。
元々FXは、顧客の取引内容を税務署に報告する義務がありませんでしたので、他の投資と比べて無申告が横行していましたが、平成21年からは、FX業者に支払い調書の提出義務が出来ましたので、もちろん全て筒抜けです(それ以前も義務がなかっただけで、税務署が請求すれば調書は取れていましたが……)。
特にこれからはマイナンバーで容易に把握できますし、実際に少額の利益のところへも税務署は回っていますので、しっかりと申告をしておきましょう。
関連記事>>>『知らないと恐い?FXの税務調査の実体を教えます』
海外へ移住しようは危険?
先ほどの事例でもご紹介しましたが、脱税のために海外逃亡することは言わずもがなですが、よく、タックスヘイブンやオフショアなど、税率の低い国へ移住をすることで、税金が減らせると思われている方がおられます。
全く間違いではないのですが、実際にやろうと思うとそんなに簡単なことではありません。
よくニュース等でも脱税で捕まっておられますけれど、いい加減な情報で間違った申告をしてしまうと、もちろん指摘されますので、事前にしっかりと裏付けをとるようにしましょう。
それらについては以下にまとめてありますので併せてご確認下さい。
関連記事>>>『オフショアやタックスヘイブンでの税金は間違えると脱税になる?』
個人のFXを事業所得として青色申告することのリスクとは?
皆さんからのご相談を伺っていると、特に確定申告前に多く寄せられる質問として、
「今年のFXの利益を事業所得として申告しようと思っているんですが……」
というのがあります。
ネット上には、それを勧めるようなサイトもあるようですが、通常、個人取引のFXは、雑所得の申告分離課税として申告するのが一般的ですけれども、それを事業所得として青色申告をしたいということでしょう。
これは既に判例が出ていて、仮に専業トレーダーであったとしても、基本的には認められず、税務署から指摘を受ける、非常にリスクの高い行為になります
(以前より似た判例を元に判断していましたので、弊社のクライアント様で、事業所得として申告させていただいた事例はありません)。
詳しくは以下にまとめてありますのでご参照下さい。
関連記事>>>『税理士が教えるFXを個人事業として青色申告することのリスクとは?』
まとめ
今回は、破産や脱税の事例を元に、気を付けるべきポイントと対策について解説しましたが、まず脱税に関しては、基本的に全てバレるだけでなく、
「脱税=無申告=全く税金対策ができていない」
という公式ですので、税務署から指摘された時には、考えられる最大のペナルティー(追徴課税など)を課せられるということになりますので、誤魔化さずにきちんと申告をするということが長い目で見てもメリットがあると言えるでしょう。
また、先ほども少し触れましたが、事前に対策をしておくことで回避できるリスクもたくさんありますので、まずは基本的な仕組みを知るということが大事でしょう。これはホンの触りですが、以下にも少しまとめてありますのでご参照下さい。
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・知らないと危ない?FX法人化のメリットとデメリットを専門家が解説
日頃からご相談をお受けしていて感じるのは、破産確率やポジションサイジング(資金管理)など、トレード自体のリスク管理をされている方は結構おられますが、今回、事案としてご紹介した方々は、一度は大きな利益を手にされたものの、税金で損をしておられる方々です。
つまり、本当のリスク管理とは、トレードのみで完結するものではなく、税金のことまで含めて管理や事前対策をおこなっておかないと、最終的にお金は残らないということを覚えておく必要があるでしょう(2015.8.20)
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