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FXボーナスやキャッシュバック

弊社には日頃から、FXや暗号資産(仮想通貨)などのトレードをされている日本全国の投資家さんから、質問や問い合わせが多く寄せられるのですが、お話を伺っていますと、ネット上の不確かな情報に惑わされて、危うく間違った申告をしそうになっておられる方が結構おられます。

もちろん間違えたまま申告してしまうと、後に税務署からお尋ねが来て、追徴などのペナルティを課せられる可能性も大いにありますので、不明な場合は、事前に管轄の税務署や、弊社のような専門家に情報を精査する必要が出て来るわけですが、見分けるための基本的な注意点としては

  • 誰が書いている情報なのか?(税理士等の専門家か?トレーダーであっても税務の素人か?)
  • いつ書かれたものなのか?(税法は毎年変わります)

は、必ず確認すべきですし、インターネット上でよくあるのは、間違えた情報が元となり、それがたくさん複製され、量産されてしまうこともありますので、

  • 検索した時に上位に出て来るから
  • たくさんの方が同じ事を書いているから

といって、正しいとは限らないと、まず覚えておくようにしましょう。

それらを踏まえて、今回はそんな不確かな情報を元に寄せられる、よくある質問の一つである「FXの海外業者などでよくあるキャッシュバックやボーナスの扱い」について、解説してみたいと思います。

関連記事>>>『FXや仮想通貨の無申告や脱税などペナルティの種類と対応策について』

 

FXのキャッシュバックやボーナスとは?

そもそも今回解説するこれらは、特にFXの海外業者でよく行われているものですが、簡単に説明しますと、口座開設時に○○円以上入金した場合や、期間中に何ロット以上の売買を行うなどの条件を満たすと、実際にトレードで使えるボーナスを貰えるというキャンペーンです。

もちろんFXの海外業者だけに限らず国内業者や、バイナリーオプションなどの業者でも同じです。

FX業者からのボーナスに税金はかかるの?

これらについて、よくいただくご相談内容というのが、

「キャンペーンのボーナスは、一時所得だから特別控除の50万円を超えなければ税金はかからないと、ネット上で読んだのですが合ってますか……?」

というものです。

これについては過去にも書かせて頂いていますが、今回は新しい情報も交えつつ、根拠と共に解説していきましょう。

関連記事>>>『FXのキャッシュバックボーナスやキャンペーンにも税金はかかる?』

個人向け国債におけるキャッシュバックの例は?

まず最初に、東京国税局の文書回答事例の中に、以下のような内容の照会に対する回答がありますので紹介致します。

これは、個人向け国債のキャンペーンで、期間中に新規資金で100万円以上購入した顧客に対して、ギフトカードかキャッシュバックという方法で景品が付与されるが、これが一時所得になるのかどうかを問うたものになります。

個人向け国債についての質問ですが、FXなど他の投資で考えるための参考資料となりますので見ていきましょう。

回答としては

ご照会のキャンペーン景品は、利子所得から譲渡所得のいずれの所得にも該当しません。

しかしながら、当該景品の交付金額は、個人向け国債を募集期間内に100万円以上購入し、その購入の多寡に応じて決定されることになるため、当該景品の交付は、当該国債の購入という行為に密接に関連してなされているものと認められます。

そうすると、当該景品は、対価性を有していることから、一時所得にも該当しません。

したがって、ご照会のキャンペーン景品は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得であることから、雑所得として取り扱われます(所法351)。

引用元:国税庁 文書回答事例「個人向け国債の購入者へ交付するキャンペーン景品の所得税法上の取扱いについて」一部抜粋

と答えられています。

少々難しいので要約しますと、このキャンペーンの景品は対価性があるため、一時所得には該当せず、雑所得になりますよと説明しています。

では、一時所得ではなく雑所得として扱われる場合、どの様な違いがあるのでしょうか。

一時所得の場合、特別控除額というのが50万円あり、簡単に言うと一時所得は50万円超えなかったら申告不要(税金がかからない)となるのです。

一方で雑所得の場合、控除額はゼロですので基本的には申告が必要(税金がかかる)ということになります。

この違いだけを見ると、一時所得で申告するほうが得だと思われるかもしれませんが、ここでポイントとなるのは、文中の「対価性があるかどうか」という部分です。

対価性とは何か?

では「対価性がある」とはどういう事かと言いますと、何かモノやサービスを提供することで、その提供した側から金銭などの給付を受けることを意味します。

例えば、FXの口座開設ボーナスや入金ボーナスのように、口座を開設したり口座に入金をすることに対する対価として、ボーナスを受け取るようなケースは、対価性があると考えますので一時所得には該当しません。

逆に「対価性がない」とはどういったケースかと言いますと、同じボーナスと言われていても、例えば「口座に100万円入金した方の中から抽選で100名様に3万円分のボーナスプレゼント」となっているような場合です。

これは該当すれば一時所得として考えることになります。

解かりやすく言い換えますと、

  1. 鉛筆10本買ったらもれなく消しゴム一個プレゼント……対価性あり
  2. 鉛筆10本買ったら抽選で消しゴム一個プレゼント……対価性なし

といったイメージです。

同じ「ボーナス」と名の付くものであっても、そのボーナスの性質はどういったものかを確認しなければ、どちらの所得に該当するのかはわからないということです。

一時所得とは?

冒頭から出てきていました「一時所得」ですが、一時所得ってなに?という方もおられるかと思いますので、今回のお話に関係する部分を少し説明させていただきます(長くなるので要点だけまとめます)。

一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。

この所得には、次のようなものがあります。

  1. 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
  2. 競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます。)
  3. 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
  4. 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます。)
  5. 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等

引用元:国税庁No.1490 一時所得

 

難しい言葉が並びますが、一言で言うと「対価性がないもの」を指します。

先程、鉛筆10本買ったら抽選で消しゴム一個プレゼントと言っていたのがこちらです。

この一時所得を計算する時は、以下のように計算します。

総収入金額 − 収入を得るために支出した金額(注) − 特別控除額(最高50万円) = 一時所得の金額
(注)その収入を生じた行為をするため、又は、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限ります。

引用元:国税庁No.1490 一時所得

このように収入から差し引けるものに、特別控除額というものがあり、最高50万円まで差し引けることになっています。

先程の、一時所得が50万円を超えなければ申告不要というのはこのことです。

つまり、この「50万円を超えなければ税金がかからない」という部分に魅力を感じて、FX業者のキャッシュバックやボーナスを、先程の「対価性があるかどうか」を見ずに、勝手に一時所得として申告してしまう行為は、非常に危険だということがお分かり頂けたかと思います。

税務は名前だけで判断してはいけない!

今回のように税理士が税務判断をする時は、原則として「その本質は何なのか」を見ます。

FX業者が行うキャンペーンには、例えば、「配当」、「キャッシュバック」、「賞品」などの名前が付くものがありますが、これをその単語だけで判断してしまうと、先ほどのように間違えた申告をしてしまいます。

例えば、FX業者が「配当」だと謳っていても、配当という言葉が付くからと言って、必ずしもそれが「配当所得」となるわけではありません。

極端なことを言えば、飼っている犬に「ネコ」と名前をつけたからと言って、その犬はあくまで犬であって、猫ではないのと同じと言えるでしょう。

まとめ

今回は海外FXのキャッシュバックやボーナスに焦点をあてて書かせていただきましたが、このように、単語や文言のみで安易に判断をしたり、いい加減な情報に惑わされては危険なケースが他にもまだまだたくさんあります。

もし、既に済んでしまった申告の中で、思い当たる点があるという方は税務署から指摘を受ける前に修正申告することで、ペナルティの一つである過少申告加算税については10%からゼロになるなど、罰則が軽くなる可能性もありますので、急いで再確認しておくことをおすすめいたします(指摘されてからでは軽くなりません)。

「今まで何も言われたことはないから大丈夫だろう」とおっしゃる方もおられるかもしれませんが、単に税務署に泳がされているだけの可能性も大いにあります(数年分まとめて来ることが多々あります)。

特に、キャンペーンやボーナスのある業者をお使いの方は、充分お気を付け下さいね。

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