この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
投資専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
FXや仮想通貨、株式やバイナリーオプション等、投資の税金対策や法人化に精通。
有名トレーダーをはじめ全国の投資家らの税務顧問を多数担当し、専門誌での連載などメディア実績多数。
業務にはオンラインも活用し、北は北海道から南は沖縄の離島までクライアント実績を持つ。
テレビのCMでもよく流れているNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)ですが、弊社のクライアント様の中には、FX以外にも株や先物取引、バイナリーオプションなど、複数の投資をされている方も多くおられますので、よくお問い合わせを頂きます。
そこでもよくアピールされているのが、NISA口座で運用した場合、100万円までの少額投資については、配当や譲渡益に税金がかからない(非課税になる)など、一見なんとも魅力的なメリットですが、実はCMでは流れていないだけで、もちろんデメリットも存在しますので、知らずに始めて結果的に普通の株式口座でしておけば良かったというケースも起こりえます。
なので、重要なポイントとして、NISAを始める場合はそれだけでなく、一般の株式口座と見比べた上で、メリットとデメリットの両方を把握しておく必要があるでしょう。
関連記事>>>『知らないと損?株の税金の計算方法と確定申告の効果的な対策とは?』
今回はそんなNISA口座を使う際のメリットとデメリットについて、専門家の立場から実際のところを解説していきたいと思います。
NISA(ニーサ)のメリットとは?
2013年の10月からNISA口座の受付が始まったこともあってか、毎月の無料相談会やお電話での問い合わせでも、
「NISAの税金について実際はどうなんでしょう?」
といった質問を受けることが結構多くあります。なので早速その辺りについて見ていきましょう。
NISAのメリットはなんと言っても利益が非課税なること
まずは、NISAの特徴を簡単に説明しますと、
- 日本在住の20歳以上が対象
- 年間120万円までの投資が非課税
- 口座は1人1口座
- 非課税期間は最長5年
- 投資総額は最大600万円
上記の特徴のように、NISAというのは年間120万円までの投資で得た利益や配当金、分配金が非課税になる「少額投資非課税制度」と呼ばれる制度です。
ちなみにNISA以外の口座(特別口座・一般口座)で得た利益には、20.315%の税金がかかります。
例えば、1株700円の銘柄を1,000株、70万円分を買ったとします。そして、1株当たり年1回100円の配当がある場合、NISA口座とNISA以外の株式口座での税金を比べてみましょう。
- NISA口座……100円×1,000株=10万円の配当金となりますが、NISAは非課税なので税金を払う必要はありません。
- NISA以外の口座→10万円×20.315%=21,150円の税金がかかります。
また、100万円で買った株が130万円で売れたとします。
- NISA口座……130万円−100万円=30万円の利益が出ますが非課税なので全額手元に残ります。
- NISA口座以外……利益の30万円×20.315%=60,945円の税金がかかることになります。
これらを見ても、少額で利益が出た場合は、他の株式口座より、NISA口座を使った方がお得になることが分かるでしょう。
NISAは確定申告が不要
NISA口座だけで取引をしている場合、利益が出たとしても、そもそもNISAは非課税ですので、確定申告は必要ありません。
確定申告を面倒と感じる方も多いかと思いますので、そういった方にはこれは有り難い制度と言えるでしょう。
ジュニアNISAと併用すると更にお得?
一般的なNISAの他に、「ジュニアNISA」というのもあるのですが、まずはこちらも特徴を簡単に確認してみましょう。
- 日本在住の0歳~19歳が対象
- 年間80万円までの投資が非課税
- 口座の管理は親権者が代理で行う
- 口座は1人1口座
- 非課税期間は最長5年
- 投資総額は最大400万円
- 原則18歳になるまで引き出せない
つまり、口座名義はあくまでお子様となりますが、口座管理は親権者が代理で行うため、NISAとジュニアNISAを併用することにより、実質的には家庭内の非課税枠が増えたと考えることも出来ます。
例を挙げますと、未成年の子ども2人とご夫婦の場合
80万円(ジュニアNISAの非課税枠)×2人分(子ども)+120万円(NISAの非課税枠)×2人分(ご夫婦)=400万円
ですので、年間の非課税枠が400万円になるというわけです。
ただし、両親から子ども名義のジュニアNISA口座へ資金を入れる際、その資金は贈与であることを忘れてはいけません。
贈与税の基礎控除は年間110万円ですから、80万円の資金を入れても贈与税がかかることはありませんが、その場合、その年におけるそのお子様の贈与税の基礎控除残額は、30万円であることに注意が必要です。
NISAのデメリットとは?
さて、メリットはよくアピールされていますが、実際にはデメリットも当然存在します。これらを知らずに始めてしまうと、後々損をしてしまう可能性もありますので、事前にしっかりと把握しておきましょう。
NISAは非課税枠の繰越ができない
NISAは年間120万円までの非課税枠がありますが、例えば今年は100万円分の投資をして、20万円が残ったので、その残った20万円分は来年に繰り越しをして、次の年は140万の非課税枠にする、ということは残念ながら出来ません。
あくまで1年間の非課税枠が120万円ということです。
NISAはマイナス(損失)が出ても損益通算できない
NISA以外の口座なら、損失と利益を相殺(損益通算)できますが、NISA口座では残念ながらそれができません。
例えば、A証券とB証券でそれぞれ1つずつ特定口座を持っていたとして、A証券の特定口座で30万円の利益、B証券の特定口座では30万円の損失が出た場合、30万円の利益と30万円の損失を相殺して、プラスマイナス0になりますから、確定申告をすれば税金がかかることはありません。
しかし、NISA口座と特定口座の両方で運用をしている場合、特定口座で30万円の利益、NISA口座で30万円の損失が出たとしましょう。NISA口座では損益通算ができないため、特定口座の30万円の利益に対しては、先ほど述べた20.315%が課税されてしまいます。
ちなみにNISA口座内での相殺もできませんので注意が必要です。
NISAは損失の繰越ができない
ここまでお伝えしてきた通り、NISAは利益が出た時のメリットは大きいですが、その反面、損失が出た時のデメリットも大きくなります。
通常、NISA口座以外(一般口座・特別口座)で損失が出た場合は、確定申告をしていれば、3年間損失を繰り越すことができますが、NISA口座では損失の繰り越しができません(利益がマイナスでも繰り越すためには確定申告が必要です)。
例えば特定口座で、去年30万円の損失が出て、今年は10万円の利益が出たとしましょう。確定申告をして、損失の繰り越しをしていれば、今年は利益が出ていても損失の金額の方が大きいので税金を払う必要はありません。
しかし、NISA口座で去年30万円の損失が出て、今年、特定口座で10万円の利益が出たとします。NISAは確定申告の必要もありませんが、裏を返せば損失の繰り越しもできないということになりますので、10万円の利益に対して20.315%の課税がされることになります。
ですので、NISA口座とNISA以外の口座の両方をお持ちの方は、注意しておく必要があるでしょう。
NISAの非課税期間は5年、移管時に注意が必要!
NISAの非課税期間である5年が経過した場合、再度NISA口座に引き継ぎたければ、現在新規でNISA口座を開設できる2023年まででしたら、翌年のNISA枠に引き継ぐこともできますし、特定口座や一般口座に引き継ぐこともできます。
但し、NISA口座で購入した70万円の株を、いざ特定口座に引き継ごうとした場合、仮にその時の時価が50万円に値下がりをしていたとすると、結果的に50万円で株を買ったことになります。
更に、特定口座に移管した後、株の価格が元の70万円となり、その株を70万円で売ると20万円の利益が出たことになり、その20万円には20.315%の税金がかかります。
実質、70万円で購入した株を70万円で売り、何の利益が出たわけでもないのに40.630円税金がかかることになってしまいますので注意が必要です。
まとめ:利益が出た場合はメリットは大きいが損失が出るとデメリットが増える
ここまで、NISAのメリットとデメリットについてご紹介してきましたが、雑誌やCM等で言われているメリットも大きい分、デメリットも実は大きくなり、それは利益が出た場合にはメリットが増えますが、逆に損失が出た場合には、一般の株式口座と比べて、デメリットが多くなるということが言えるでしょう。
特に非課税期間はご自身の意思とは関係なくやってくるものですので、そこを見落として特定口座に引き継いでしまうと、思わぬ損を招くこともあり得ます。その辺りのデメリットも充分把握してから、有効に活用するようにしましょう(2013.10.17)
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