FXの経費として認められるもの

毎月の無料相談会では、FXの法人化に関するご相談も多いのですが、お勤めの方にとっては、法人化や会社設立と聞くと非常にハードルが高いというイメージをお持ちの方も多いようで、また税金のことで間違った認識をされている方も多くおられます。

確かに法人化し、法人口座で取引することで、より効果的な税金対策を行ったり、レバレッジ規制の回避が出来るなど、メリットも大きいですが、全ての方にとって有効なわけでもありませんので、今回はFXの法人化のメリットとデメリットについて、専門家の立場から解説していきます。

 

法人化のメリットとは?

まずは法人口座を使って得られるメリットについて順に解説していきましょう。

1)レバレッジ規制を回避できる

個人口座ではレバレッジ規制がかかる一方、法人口座で取引することで、多くの業者ではレバレッジ規制を回避することが出来ます(※現在は法人口座も規制がかかりましたが、多くの証券会社では個人のレバレッジよりも有利です。また、海外のFX業者を使ってレバレッジ規制を回避する時にも、法人口座を開設することで税金を大幅に削減することが可能です)

2)個人口座よりも効果的な税金対策が可能になる

以前の記事で、

「法人税等の実効税率は40%だから、税率を比較して20%になる個人取引の方が有利ですよね?」

という質問に対して

「それは間違いで、単に20%や40%とという実効税率の数字だけを比較して有利不利を決めると損をしてしまう可能性があります

という内容を解説しましたが、もう少し分かりやすいように具体例をあげてみましょう(数字が苦手な方は、今回は結論が非常に重要ですので、その部分は軽く読み流していただいて構いません)。

具体的なモデルケース

●本人:サラリーマン 年収500万円
 配偶者:妻(専業主婦)
 FXでの年間利益1,000万円

仮にこの方をAさんとします。Aさんが法人を設立し、自分と奥さんに年間100万円ずつ役員報酬(給与)を支払ったとしましょう。さらに、法人ならではの節税対策を行い、利益の中から500万円を繰り延べたとします。この場合、法人税等の額を計算するには、

(FXの利益-法人の経費-節税対策をした金額)×税率

となります。また税率についてですが、法人税等の実効税率は、

400万円以下:24.87%
400万円超800万円以下:26.48%
800万円超:40.86%

と、上記計算式のカッコ内の金額によって変わります(皆さんがよく目にされる40%とという数字は、カッコ内の金額が800万円超の場合の実効税率となります)。

では、計算してみましょう。自分と奥さんへの役員報酬は経費になりますので、

10,000,000円-2,000,000円-5,000,000円=3,000,000円

となります。この金額に税率を掛けることになりますので、法人税等の額は、

3,000,000円×24.87%=746,100円

となります。また、自分に役員報酬を支払うことにより個人の収入が100万円増えますので、個人としての税金が160,000円増えることになります(個人の所得税および住民税の計算をすべて記述しますと複雑になりますので、今回は割愛させていただきます)。

これらにより、法人でFXをすることにより支払う税金は、

746,100円+160,000円=906,100円

となります。では、この税額が利益に対する何%なのか計算してみましょう。

906,100円÷10,000,000円=約9.1%

どうでしょうか。

利益が出た際の税金のことを考えるのであれば、法人ならではの節税対策を行うことで、個人名義で取引された場合の20%という税率の、半分の割合にしてしまうことも可能であることがおわかりいただけたかと思います。

ちなみに以前の記事とどの部分が違うかというと、節税対策を行った金額(繰り延べた金額)が異なります。

日ごろから皆様のお問い合わせをお聞きしておりますと、税率とは《利益》に対する割合と思ってらっしゃる方が多いように感じますが、正しくは、税率とは、《所得》に対する割合ということになります(この場合の《所得》とは、利益から経費や給与等を差し引いた額を指しています)。

法人の場合、この他にも様々な方法で《所得をコントロールすることが可能》ですので、節税対策の行い方によっては、税額が利益に占める割合を数%まで下げていくことも可能になるのです。

また、節税対策のために繰り延べた500万円について補足説明させていただきますと、税金は一度払ってしまうと返ってくることはありませんが、節税対策のために繰り延べたお金は後々使うことも可能ですので《万が一の際の保険》ともなりえます。

※この度、所得税の改正通達があり、個人のFXや暗号資産における経費の範囲が縮小されました。新しい情報はリンク先の記事をご参照下さい。
>>>『【悲報】FXや仮想通貨(暗号資産)の経費が認められなくなった?』

3)損失の繰り越し期間が長い

万が一、国内業者で損失を出してしまった場合、繰越をすることが出来ますが、その繰り越し期間も個人が3年なのに比べ、法人は7年(現在は更に延びて10年間になりました)となりますので、リカバリーする間の税金を抑えることを考えると、大きなメリットがあると言えるでしょう

(ちなみに個人の損失繰り越しは自動的に出来るものではなく、損失が出ていても必ず確定申告をしておく必要があります。また個人の海外業者は損失を繰り越し出来ませんが、法人化することで可能になります)。

4)先に利益が出て、あとから損失が出た場合に繰り戻すことが可能

これはネット上でもほとんど書かれていないことですが、先ほどは、損失が出た場合に繰越が出来るという話でしたが、実際には逆のパターンも起こりえます。先日ご相談に来られた方は、

「昨年FXで利益が出たのだけれど、年明け早々、既に同じくらいの損失が出てしまいました。まだ確定申告の時期はこれからですが、昨年分の利益に対する税金は納めないといけないのでしょうか……」

という内容でした。つまり大きな利益を確定し、明るい気持ちで年を越していたのに、年明け早々の暴落が影響してか、大きく損を出されたとのこと。

現実には、手元のお金は一円も増えていないのに、利益を出した日と、損失を出した日の年が違ったというだけで、納税が重くのしかかっている状況です。

このような場合、何とかできないものでしょうか。

上記のようなケースでは、個人口座でトレードをしている場合は正直どうしようもありません。

先ほどお伝えした通り、税制改正によって、国内証券会社を利用した個人FXの場合、損失を3年間繰り越せるようにはなりましたが、これはあくまでも先に損失が出た場合に、その翌年以降に損失を繰り越していくという制度なので、先に利益が出た場合には、この制度では対応できません。

ただ、実はこのケースに関して全く対応方法が無いわけではなく、法人口座でトレードをしていれば、実は対応することが可能です。

法人税には繰戻還付という制度があり、1年目に利益が出て税金を納めていても、2年目に損失が出た場合、その損失を翌年以降に繰り越すのではなく、前年に繰り戻して法人税の還付を受けることが出来るのです。

所得税にも繰戻還付という制度はあるのですが、この制度の対象は不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の損失だけで、FXの所得が該当する雑所得の損失は対象になりません。ちなみに、FXの所得を事業所得として青色申告できるのかについては、以下にまとめていますので、併せてご確認下さい。

関連記事:「税理士が教えるFXを個人事業として青色申告することのリスクとは?」

法人化のデメリットとは

これだけメリットがあるFXの法人化ですが、もちろん誰にでも有効なわけではなくデメリットもありますので、事前に理解しておく必要があるでしょう。

1)法人設立費用がかかる

法人口座にて取引する場合、もちろん事前に会社を設立する必要がありますが、株式会社の場合は司法書士に依頼をすると大体30万円前後になります。ちなみに弊社へご依頼をの場合は、行政に支払う法定費用以外はこちらが負担致しますので設立費用は無料です。

事実、弊社のクライアント様の約半数は、サラリーマンをされながらFX用の会社を設立され、法人口座で取引をされている方ですが、始められるまでは大変なことだと思われていたのが、依頼をすれば自動的に出来上がってくるものですので、そんなにハードルの高いものではないことを皆さん理解されるようです。

2)法人の維持費がかかる

別途、事務所を構えられる場合はその家賃等も必要になってきますが、FXは基本的に在庫等もありませんし、対外的なやり取りもありませんので、ご自宅の住所で登記される方が多く、他の維持費としてかかるものとしては、毎年7万円かかってくる均等割という税金と、あとは決算を依頼する税理士費用、一般的には年間5〜60万円があげられるでしょう。

よく、FXを青色申告したいとおっしゃる方がおられますけれど、実際に出来るどうかは別として、理由としては65万円の控除を狙っておられるようですが、税務署としても、素人が作ったバラバラな申告書をたくさん扱うより、プロの税理士が作った体裁の整った申告書の方が見やすいので、事業を始められた方にはその分を国が負担しますね、というのが本来の控除の意味だと考えています(なので金額もほぼ同額です)。

3)もし利益が出なくなった時には

順調な間は良いけれども、万が一、利益が出なくなった時のことを考えられる方も多いようですが、税理士がきちんとした対策を行えば、もちろんその間の税金や均等割なども不要になりますし、復帰される時まで、会社を休眠させておくことも可能です。

トレード手法によって考えることも重要!

ここまでは、税金のことをベースにFXの法人化のメリットとデメリットを解説してきましたが、弊社は日本初のFX専門会計会社ですので、クライアントさんの中には様々なトレード手法のトレーダーさんがおられます。

その中で、税金や節税のことをお話するのは、税理士としては専門業務なのですが、実際に重要なのは「投資家さんのトレードスタイル自体」です。いわば、トレード手法やスタイルというのはその方にとって命ですので、それを節税のために崩すことがあっては本末転倒だと言えるでしょう。

例えば、個人と法人とでは、所得(税金のかかる金額)の計算方法が異なります。

個人口座での取引の場合、所得とは1月1日から12月31日に決済した金額とスワップを合計することになります。

それに対し、法人口座での取引の場合には、期中に決済した金額とスワップの他に、決算時点での未決済ポジションを評価して(決済したものとして)、利益や損失に加えることになります。

これは結構重要なことで、仮に未決済ポジションがプラスの状態で決算を迎えた場合、決済した利益に含み益を加算することになります。

なので例えば、一時期流行った「円キャリートレード」や、マネースクウェア・ジャパン(m2j)の、「トラップリピートイフダン(トラリピ)」、また「ツナギ売買」のように両建てを使った手法など、含み損を保有する(可能性のある)手法を採っておられるトレーダーの方であれば、法人口座で取引しておくことで、申告の際に決済した利益と含み損を相殺させてしまうことが可能となります。

そういった理由から、最初から法人を設立されるお客様も弊社では結構おられます。

 

つまり、税理士だからFXに関する税務のことだけを知っていれば良いということではなく、トレード自体のことも含めて理解をしておかないと、結果として、クライアント様に不利な条件を提案してしまう可能性も出てくるのです。

FX法人化のまとめ

ここまで、FXにおける法人化のメリットとデメリットを解説してきましたが、実際には金融庁の規制により、誰でも目にすることができるホームページなどには書いてはけない(宣伝できない)法人ならではの節税法もありますので、更に合法的かつ有効に税金対策をすることも可能ですが、実際に法人化をされる際には、ご自身のトレードスタイル等も考えられた上で判断されることが重要でしょう。
(2011.8.11)

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